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ヘリコニア談話室ログ(2001年1月)


西鶴と眉村さんの間 投稿者:管理人  投稿日: 1月31日(水)21時38分53秒

ここ数日、大谷晃一『大阪学 文学編』(編集工房ノア)を読み散らしているのですが、この本に描かれた西鶴と眉村さんとが、なんかよく似ているのでニヤリとしています。
どこが似ているかというと、それはヘンにこだわるところです。

あるとき西鶴は、24時間に俳句(俳諧)を何句詠めるかという、ヘンな試みをしました。1600句一人で詠みきりました。これが評判になりました。評判になると対抗する者が現れます。西鶴の記録を破ります。
西鶴も負けていません。一日一夜に4000句詠みました。見物衆はヤンヤヤンヤです。
するとまた破る者が現れます。西鶴は黙っていません。息も切らせず句を繰り出し、24時間でとうとう2万3500句に達します。3.7秒に一句です!これで打ち止めになりましたが、西鶴はこの張り合いの気持ちを終生失わなかったそうです。

かたや眉村さんも、現在「日課・一日3枚以上」に挑戦中で、平成9年7月16日から今日まで、一日たりと欠かさずショートショートを書き続け、遂に3年6ヶ月・1280日に達しました。
他にも『一分間だけ』というショートショート集では登場する主人公の名前をアキラ、イサム・・・とアイウエオ順に名付け、最後の作品の主人公は「ンチャカ」です。

こういう制約を自作に課すことが、眉村さんにはよくあります。ある意味<無意味>な「こだわり」が、眉村さんはお好きです。もちろん病床の奥さんに毎日自作を読んで差し上げることが無意味なことだと言っているのではありません。<無意味>な「こだわり」では語弊があるなら、<稚気あふるるこだわり>と言い換えましょう。

西鶴の「負けず嫌い」も、眉村さんと同じく<稚気>が根底にあったのではないでしょうか?
著者は、こういいます、「西鶴のそのすべてが、その矛盾も含めて、まぎれもなく大阪人である」と。
眉村さんにも当てはまる言葉ではないでしょうか。


梅田橋の構造論 投稿者:管理人  投稿日: 1月29日(月)19時24分28秒

大谷晃一『大阪学 文学編』(編集工房ノア)によりますと、「曽根崎心中」の成功を期に、近松は京都から大阪(天満)に移っています。宝永二年(1705)近松53才のことです。これから20年間近松は主に竹本座のために浄瑠璃を書き続けるのですが、おりしもこの間に曾根崎新地が開発され、遊里は堂島から次第に曾根崎新地へ移っていったのだそうです。

つまり、お初徳兵衛の頃はまだいわゆる曾根崎新地はなかったのでしょう。殷賑を極めたのは天満屋のあった堂島新地すなわち蜆川の南岸だったのですね。
梅田の橋を北へ渡れば、そこははや黒々と闇が包み込む人跡未踏のというと大袈裟かも分かりませんがそんな場所だったに違いありません。
だからこそ、梅田橋を渡ったお初と徳兵衛に、近松は南岸のどことも知れぬ宿での狂態を振り返らせているわけですね。川の南と北、賑わいと空虚、光と闇、生と死・・・
蜆川の北岸いわゆる梅田の堤こそ(あるいは梅田橋を北へ渡るという行為こそ)道行きに相応しい空間(象徴)だったわけです。

というわけで、昨日の文章
>この大火で近松が曽根崎心中や心中天の網島などの舞台にした曾根崎新地は消滅してしまいます。
は、訂正します。曽根崎心中は曾根崎<新地>とは関係がありません。


藤原義江の曾根崎新地 投稿者:管理人  投稿日: 1月28日(日)15時40分49秒

東秀三『大阪文学地図』(編集工房ノア)によれば、古川薫『漂泊者のアリア』(文芸春秋)は、平成3年の直木賞作品ですが、作品のモデルはオペラ歌手の藤原義江です。義江は下関の琵琶芸者とスコットランド人の間に生まれたハーフですが、父親に母親ともども捨てられ大変な辛苦を舐めます。小学3年生の時大阪に出てきて、母親は北新地で琵琶芸者を始め、義江は学校へも行けず仕事を転々とします。

貿易会社のボーイをしているとき、父親が下関で羽振りがいいと分かって夜汽車で一人会いに出かけます。結果は惨めで父親は会ってもくれず、「まるで荷物のようにまた同じ鉄道を走る列車に乗せられて」大阪へ追い返されます。夜汽車で眠っていた義江は、姫路まで来たとき「大阪北区は昨夜からの大火で、目下延焼中です」という車掌の知らせを聞きます。

――これすなわち明治42年7月31日の北の大火、通称天満焼けであります。空心町から出た火は折からの東風にあおられて西へ西へと燃え広がり、福島区までを総なめにして1万1365戸を焼きつくしたことは、先日の蜆川さんの記述の通りです。

これで義江は母親と生き別れとなり、ふたたび下関へと送り帰されるのですが、この大火で近松が曽根崎心中や心中天の網島などの舞台にした曾根崎新地は消滅してしまいます。
焼けた家の瓦が新地のなかを流れる蜆川を埋め尽くし、蜆川そのものがなくなってしまったことも既述の通りです。

さて現在の北新地は四つ橋筋と御堂筋の間ですが、消滅した曾根崎新地は桜橋の西側が中心だったようです。そう言う次第で梅田橋の異様な西寄りも納得できますね。梅田(の中心部)は天満焼けによって東へ移動したのではないでしょうか?


人外境新年会 投稿者:管理人  投稿日: 1月28日(日)13時55分47秒

昨晩は名張人外境新年会でした。楽しかったですー。私が幹事でしたので、最後まで恙なくすすめることが出来ていささかホッとしています。

今回は久々に芦辺拓先生がお越し下さいました。締め切り直前の修羅場にもかかわらずご出席賜りまして本当にありがとうございました。

初参加のりえぞんさんは、わざわざ東京から駆けつけて下さいました。初めてお会いしましたが、いつもにこにこされているとても気さくな方でした。実はもっと神経質な天才肌かなあと思っていたのでやや意外でした。これからもよろしくお願いします>りえぞんさま

ルパン研究家のS田さんとお引き合わせしたかったのですが、新幹線の関係で丁度入れ違いになり残念。しかし近い将来りえぞんーS田コンビで大きな仕事が成し遂げられるやも・・
ところでホームズのあの帽子、欲しい方はいませんか?寸法を測ってS田さんに頼めば作ってくれますよ(実費)。興味ある方は連絡下さい。

臼田惣介さんは、お身体も順調なようで一安心しました。
亜駆良人さんが、日本の近代文学にも造詣が深いことが分かりました。
このご両人、いったいどれくらいこれまで読み続けてきているのか、ちょっと唖然とし、空恐ろしくなります(^^;ゞ。
さて臼田惣介さん、亜駆良人さんに芦辺先生が加わればさこそすごいミステリ談義が始まるかと息をひそめて見守っておりましたが、みなさん自重気味で残念(^^;。
芦辺さんに今書いていらっしゃるアイデアを聞く。おお!壮大です(^^)。

橋詰久子さんはちょっとお疲れ気味のようでしたが、カラオケの頃には復活されておりました。ご同慶の至りです(^^;。

日夏杏子さんとも久しぶりにお会いしました。お得意の語学にさらに磨きがかかっておられ心強い限りです。アイドルをさがせ、日本語バージョンしかなくごめんなさい。

アレクすてさん、今回は二次会までお付き合いして下さいました。お疲れさまでした。カラータイマーがだんだん長くなっていますね、次回もこの調子でお願いします。今回はアレクすてさんの読書嗜好が明らかにされました(^^)。大ロマン小説へ邁進して下さい!

村田耿介さんも、お仕事後お疲れのところ駆けつけて下さり、ありがとうございました。ご主人と橋詰さんの両酒豪に挟まれて大変だったのではないかとお察しいたします(^^)。次回もこれに懲りずご参加下さいね。

二次会を終わってご主人さまは、ラーメンをご所望されたのですが、多数派がカラオケを選択してしまい申し訳なかったです。次は新世界か天下茶屋か、はたまた鶴橋か、いずれにしてももう少し近鉄に近いところを考えましょうか。

ということで皆さまお疲れさまでした。


お知らせ 投稿者:管理人  投稿日: 1月26日(金)21時09分43秒

お知らせです。
名張人外境番犬情報によりますと、中井英夫最後の助手、本多正一さんの著書が入手できるようになったようです。下に転載します。

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●1月25日(木)番犬敬白 

『彗星との日々』と『プラネタリウムにて』

 以前にもご案内いたしましたが、中井英夫最後の助手、本多正一さんの著書二冊をご紹介申しあげます。


『彗星との日々 中井英夫との四年半』
  発行日■1996年2月29日
  本の大きさとページ数■縦17.0センチ×横18.5センチ、七十一ページ
  帯の惹句によりますと■「死んだらどこへ行くんだろう」 中井英夫の最晩年、その生と死を見つめ続けた記憶の轍 最期の日々に捧げられた光と影の一冊の供物
  価格■二三〇〇円(税・送料込み)

『プラネタリウムにて 中井英夫に』
  発行日■2000年2月29日
  本の大きさとページ数■縦19.5センチ×横12.5センチ、百七十三ページ
  帯の惹句によりますと■アンチ・ミステリを謳い、今なお多くの作家を呪縛しつづける戦後推理小説の白眉『虚無への供物』の作者・中井英夫。この“奇妙な作家”の最期を看取った本多正一が写真と文章で綴る晩年の日々。未公開写真多数含む写真300点掲載
  価格■二三〇〇円(税・送料込み)

 『彗星との日々』は自費出版による刊行であり、『プラネタリウムにて』は版元の葉文館出版が倒産いたしましたことから、どちらも著者への直接申し込みがもっとも確実な入手方法となっております。そのことをお伝えする意味もありまして、ここにあらためてご紹介を申しあげる次第でございます。
 購入申し込みは郵便振替でお願い申しあげます。
  口座番号■00180-6-158655
  加入者名■本多正一
 郵便振替用紙の通信欄にご希望の本のタイトルを明記し、サイン(ならびに為書)のご要望がございましたらその旨もお書き添えください。


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まだ購読されてないのでしたら是非お買い求め下さい。どちらも本当によい本です。
願わくば、両方お買い求めいただいて併読されることをお勧めします。
ヘテロ読誌に感想を記しておりますので参考にしていただけたら幸甚です。(ヘテロ読誌2000年2月、3月)


ひき続いて、お知らせします。

風の翼がリニューアルされました。
待望の戸田勝久画伯の画像が3枚も投入された実に贅沢な画面づくりです。サイト管理者yagyuさんの心意気が溢れています(^^)。
ぜひアクセスして下さい!

なお、戸田勝久展が開催されております。こちらも人外境番犬情報を再録しておきます。

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 名張市立図書館「江戸川乱歩リファレンスブック」の装幀をお願いしております神戸市在住の画家、戸田勝久さんの個展「静物画として──戸田勝久展」が1月20日、京都市の蔵丘洞画廊で開幕いたします。

 会場■蔵丘洞画廊
    京都市中京区御池通河原町西入ル
    地下鉄東西線市役所前駅下車 本能寺会館一階
    Tel:075-255-2232 Fax:075-255-1786
    E-mail:zokyudo@meix-net.or.jp
 会期■1月20日(土)−28日(日)
    午前10時30分−午後6時30分 会期中無休
 蔵丘洞画廊のメッセージ■独特のシュールな画風で知られる氏による初の静物画展。画家としてさらなる領域に挑む、氏の新作をご高覧ください。

 出展作の一点、「ささやかな季節」(2F)をご高覧ください(いささかシャープネスに欠ける画像となっております点はご容赦いただきたいと存じます)。

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日曜までです。お見のがしなきよう!


あだしヶ原の・・・ 投稿者:管理人  投稿日: 1月25日(木)19時47分31秒

>梅田橋は旧阪大病院跡の北あたりと思われます。
ずいぶん西ですね。そうするとお初と徳兵衛は、阪大病院跡から蜆川の堤沿いに、とぼとぼと、曾根崎の森いわゆるお初天神まで歩いて行くわけですが(おお、貴君が夜のネオンに誘われて歩く道と同じですな(^^;ゞ)、しかしかなりの距離ですね。死にに行くのですから足も遅れがちになるでしょうから小一時間はかかったのではないでしょうか。
お初と徳兵衛は梅田橋で7つの時(午前3時)の鐘をきいております。とすれば、お初天神に着いたのはおそらく午前4時前。季節は旧暦5月の夏の初めですから、そろそろ東の空が白んで来ようかという刻限であります。徳兵衛は手が震え目も眩んで、刀が左右にぶれてなかなかお初を刺し殺せません。おそらくお初は何カ所も浅傷を作られ血みどろの凄惨な姿だったのではないかと思われます。そうしますと真っ暗闇ではない暁のほの白さの中で、徳兵衛にもお初の血まみれのあわれな姿はうっすらと見えていた可能性が高いですね。

いや、蜆川さんのおかげで曽根崎心中の世界が具体的なものとして見えてきましたです(^^)。
折しも27日の人外境新年会は、曾根崎お初天神界隈で行われますので、時間があれば参拝してお初徳兵衛を偲びたいと思います。
蜆川漁人さん、ありがとうございました。


梅田橋の所在地 投稿者:蜆川 漁人  投稿日: 1月25日(木)02時10分25秒

梅田橋は旧阪大病院跡の北あたりと思われます。
>右(東)に行けば浄祐寺、左(西)に行けば上福島天神
の両宗教法人は現存していますし、以前プラネタリウム(四ツ橋ではなく中の島)
で曽根崎心中の日の夜空を再現している時にも、その舞台がプラネタリウムのすぐそば
であったと解説していました。
ちなみに小生の家の前に汐津橋があり、戦前まで「汐の湯」という風呂屋があったようです。
今では蜆川の川筋を、昼は本屋に夜はネオンの街へと往来しております。


わがパキーネ 投稿者:管理人  投稿日: 1月24日(水)21時56分27秒

ご存じ名張人外境ご主人が、1月22日(月)の人外境主人伝言録で、私に挑戦しています(^^)。

> 大熊宏俊君にお知らせしておきましょう。名張市内の書店には出回らないちくま文庫から、
>昨年12月に猟奇文学館2『人獣怪婚』(七北数人編、本体七八〇円)というアンソロジーが出ました。
>ここに、眉村卓さんのある短篇が収録されています。ご存じでしたか。
>眉村さんの「猟奇」作品とは何か、まだ同書をご存じないのでしたら当ててみてください。

ha、ha!もちろん知っておりますよ。眉村さんの猟奇作品、それは「わがパキーネ」です(^^)。
なぜ知っているかというと、実は「眉村卓ワンダー・ティー・ルーム」のY店長さんから教えていただいていたのでした(ワンダー・ティー・ルームのトップページをご覧下さい)。
けれども、名張市同様、わが貝塚市もちくま文庫は流通しないので、まだ現認しておりません。確認したらうちのトップページでも紹介しようと思っているのですが、正月の「風の翼」新年会以来、大阪へ出る機会がありません。27日の人外境新年会の時にでも探してみます。


梅田橋 投稿者:管理人  投稿日: 1月23日(火)20時20分54秒

古地図によれば、梅田橋を渡って右(東)に行けば浄祐寺、左(西)に行けば上福島天神となっています。


曽根崎心中 投稿者:管理人  投稿日: 1月23日(火)20時10分30秒

蜆川さま

古地図では、堂島小橋から順に汐津橋、梅田橋、緑橋、桜橋・・・と並んでいます。
さて、深夜の堂島新地を辛うじて脱出した天満屋の遊女お初と、その馴染み客、醤油屋の手代徳兵衛が、手に手を取り合って、蜆川にかかる梅田橋にさしかかったとき、これが今生のききおさめの七つの時の鐘が鳴り響きました。思わず見上げた空には燦然と輝く北斗七星、天の川。ここでふたりは梅田の橋をかささぎの橋と見立て、われとそなたはめおと星、かならず添うと、抱き合って泣いたという、その梅田橋とは、いったい現在のどの場所に当たるのでしょうか?現在の梅田からはかなり西に外れていますが・・・。


レス 投稿者:管理人  投稿日: 1月22日(月)22時14分05秒

蜆川さま
モダン大阪情報、ありがとうございます。

>今でも厚生年金病院の北あたりにそのレンガ塀の一部が残っています。
そこは私も覚えています。その辺りに安くておいしいパン屋さんがあって、日曜の朝はいつも買いに行っていました。30年近く前の話ですけど(^^;。
当時は赤レンガの遺構というか残骸がそこここにありましたね。下福島公園の南側、市営プールのある場所もプールが出来る前は、お化け屋敷みたいなレンガの建造物があったような記憶があるのですが・・・。

それはさておき、『フレームシフト』はまだ読んでいません。ソウヤー、これ以上新しいことは見せてくれないような、わたし的には見きわめがついてしまったような感じで、食指が動かなかったのです。
そういうことなら読んでみることにしますね(^^;。

アレクすてさま
『五人対賭博場』>入手困難となると、ますます読みたく(見たく)なりますねえ。


(無題) 投稿者:アレクすて  投稿日: 1月22日(月)14時59分04秒

管理人様、 臼田様
ありがとうございます。
『五人対賭博場』映画版面白そうですね。
『五人対賭博場』は フィニィのデビュー作だったのですか。
それで再版されないのですかねえ。
ではでは。


蜆川由来記 投稿者:蜆川 漁人  投稿日: 1月22日(月)01時33分27秒

「蜆川の蛍」という本が出ていることは、しりませんでした。
今ではその痕跡はありませんが、桜橋、出入橋、浄正橋、と蜆川に架かっていた橋が地名として残っています。ちなみに堂島大橋(堂島川)は堂島小橋(蜆川)と対になって大橋という名称がつけられたということです。これは三条大橋(鴨川)と三条小橋(高瀬川)があるようなもので、ただ大きいから大橋とつけられたわけではないとのことです。
それから>明治42年(1909年)7月の大火<とありますが、これは天満焼けと言われ、今の空心町のあたりから出た火が、折からの東風にあおられて福島のあたりまで延焼した大火災であったようで、この火事を体験した人の話を聞いたことがあります。延焼してきた火が、紡績工場のレンガ塀でようやく止まったということです。今でも厚生年金病院の北あたりにそのレンガ塀の一部が残っています。レンガ塀というのは空襲の火災にも残ってきていますから、建造物でありながらある種の威厳をもった風格があるように感じます。

話は変わりますが、昨年でた「フレームシフト」というソウヤーの小説は読まれましたか。
ヘテロ読誌では見かけなかったような気がしましたが、もし書かれてあったのでしたらごめんなさいです。ハードSFにしてはすぐに読めてしまうというひねりの無さは感じますが、相変わらず達者なストーリーテリングです。また貴兄の鋭い切り口での感想評を楽しみにしています。


夜聖の少年 投稿者:管理人  投稿日: 1月21日(日)22時36分32秒

浅暮三文『夜聖の少年』(徳間デュアル文庫)読了。
おお、正真正銘のジュヴナイルです。いいですねえ。
登場人物はちゃんとしたジュヴナイル語をしゃべります(^^;。「たく!」なんて現代コトバは一言もないのが(わたし的には)いい。
内容的にもハインラインのジュヴナイルに匹敵する力作!
もっともSFというよりは反ユートピア教養小説です(^^;。ちょっと眉村っぽいニュアンスを感じてしまいました。
おすすめ。


ドラマ「まぼろしのペンフレンド2001」 投稿者:管理人  投稿日: 1月20日(土)20時12分56秒

第3回目にしてはじめて、30分通して見ました(^^;。
原作より登場人物が多彩です。
考えてみれば原作の登場人物は、本当に必要最小限にとどめられていますね。だからわずか150ページで収まってしまったのでしょうけど。
大阪弁の、なんかダウンタウンの浜ちゃんに似たキャラクターがいいですね(^^)。


蜆川(承前) 投稿者:管理人  投稿日: 1月20日(土)16時57分37秒

蜆川漁人さま

『蜆川の蛍』の見開きに載せられた古地図をにらんでいたら、だんだん蜆川の川筋が見えてきました。
堂島川に掛かる大江橋のすこし東側、ちょうど裁判所のあたりで堂島川から北西方向へ別れた蜆川は曾根崎新地(北新地)の南側を流れて、桜橋(という橋がかかっていたのですね)の交差点の南辺で南西へ方向を変え、阪大病院の北側を過ぎ、本遇寺の前辺りを通って、下福島公園の手前、堂島大橋で再び堂島川に合流していたのではないでしょうか。

ちょっと検索してみましたら、蜆川は明治42年(1909年)7月の大火の後、大火時の瓦礫等で埋められてしまって、今では痕跡すら残っていないとのこと。
ただ北新地の南側に、堂島と新地を結ぶ蜆橋が掛かっていたことを示す石碑があるそうです。

あっ、、、
そうか、堂島って島やったんや! 
中之島の北に堂島があったんですね。今、気がつきました(^^)。
八十島といわれ、八百八橋と謳われた往時の水都の姿が、一挙に具体的なイメージとして了解できたような気がします。


いらっしゃいませ! 投稿者:管理人  投稿日: 1月19日(金)20時04分57秒

臼田惣介様
ご来信お待ちしておりました。懇切な情報をありがとうございます。

>「五人対賭博場」(54年)はフィニィのデビュー作で、五人の十代の若者が奇想を持って、
>鉄壁と言われる賭博場の金庫室を襲うという話しですが
おお、なんか山田正紀みたいですね。面白そう!!映画も見てみたいし、本も読みたいです(^^)。

そういえば、山田正紀は岡本喜八の映画(独立愚連隊シリーズ)を文字で再現しようとして「火神を盗め」などの冒険ものを執筆したそうです。たしかに映画にしたら面白そうな設定の話が多いですが、映画化されたものってありますか?ないんじゃないでしょうか。

蜆川猟人様

「殺人喜劇のモダンシテイ」、よかったですか。
芦辺先生には「モダン大阪」もの、どんどん書いていただきたいですねえ(^^)。
ところで上の臼田惣介さんの読んでも死なないでは芦辺拓ベスト3が発表されていて、貴兄のお気に入りの『歴史街道殺人事件』が番外に入選しています。ご一読を(^^;。

それはそうと、今、井上俊夫『蜆川の蛍』(編集工房ノア)を読んでいます。
蜆川って、なかなか由緒ある川なんですね(曽根崎心中)。昔の(江戸時代?)地図がのっているんですが、それを見ると、堂島川と蜆川に挟まれて<もうひとつの中之島>が形成されていますね。埋め立てられたのはいつ頃なんでしょうか。


ごぶさたしました 投稿者:蜆川 漁人  投稿日: 1月19日(金)18時00分18秒

ちょっと接続がうまくいかなくて、ルーターの設定は難しいです。
市岡パラダイスは一度読んでみたいですね。この正月に芦辺氏の
「殺人喜劇のモダンシテイ」を読んだところですので、
また戦前の大阪の町の独自の進取の雰囲気を味わいたいです。



映画「五人対賭博場」のこと 投稿者:臼田惣介  投稿日: 1月19日(金)00時31分16秒

管理人様、アレクすてさん、

寒いですねぇ。「五人対賭博場」の件ではお役に立てず、すみませんでした。
今頃、何をとも思いますが、折角の機会ですので、映画版の余談でも。
「五人対賭博場」(54年)はフィニィのデビュー作で、五人の十代の若者が奇想を持って、
鉄壁と言われる賭博場の金庫室を襲うという話しですが、その翌年には映画化されています。
映画原題は原作に同じ、スタッフは、
       監督  フィル・カールスン
       脚色  スターリング・シリファント
       出演  キム・ノヴァク、ブライアン・キース      

興味深いのは脚色のシリファントです。シリファントと言えば、ジョン・ボール原作の
「夜の大捜査線」の脚色でアカデミー脚色賞を受賞して有名になった人ですが、「五人対
賭博場」はその彼が、制作を兼ねて脚色した最初の劇場用映画になります。。
シリファントが如何に注目すべきか、彼がその他に脚色した映画をいくつか挙げてみます。
  原作/ジョン・ウィンダム「呪われた村」      → 映画/「光る眼」
     ダニエル・キース「アルジャーノンに花束を」 →    「まごころを君に」 
     レイモンド・チャンドラー「かわいい女」   →    「かわいい女」
     マックス・カットオ「マーフィの戦い」    →    「マーフィの戦い」 
     ジョセフ・ウォンボー「センチュリアン」   →    「センチュリアン」
     ポール・ギャリコ「ポセイドン・アドベンチャー」 →  「ポセイドン・アドベンチャー」
という次第です。そう言えば「タワーリング・インフェルノ」もそうでした。
で、何が言いたいかというと、だから「五人対賭博場」は劇場未公開のようだけど、面白くないはず
がない・・・・・ということです。石上三登志も、『この位、趣味がはっきりしていれば、シナリオ・ラ
イターの名前だけで映画を見に行こうって気にもなる。どんな趣味かというと、<奇想天外>好みの
あなたや僕と同じね』と言っています。
因みにキム・ノヴァクが「めまい」に出たのは58年で、「ピクニック」が55年だから、彼女としては
絶頂期の映画と言えます。監督のフィル・カールスンはドナルド・ハミルトン原作の<マット・ヘル
ム>シリーズの「サイレンサー/沈黙部隊」や「サイレンサー/破壊部隊」(以前はTVでよく放映
してましたが)を撮った人です。
               以上、遅まきながら、ご参考まで。
     


BGM 投稿者:管理人  投稿日: 1月18日(木)20時13分22秒

↓のシカゴのコメント、撤回します。
聞きこむにつれ、昔の感動がよみがえってきました(^^;。
実は聞きのスタンスがちょっとずれていた、っていうか、要するにボリュームを上げたらよくなりました。ha、ha!
いやー分厚い音がよいですねー!!
しかし調子に乗って子供におこられた。子供にステレオのボリュームを注意される親って、私くらいかも(^^;ゞ


市岡パラダイス(承前) 投稿者:管理人  投稿日: 1月17日(水)21時47分29秒

↓の長瀧五郎は、永瀧五郎の誤りです。訂正します。
この本(市岡パラダイス)は、ブックオフで2冊並んでいるうちの1冊を購ったのでした。今日、布教用にと思って、残りのもう1冊を買いに出かけたのですが、残念ながら売れていました(^^;。
そのかわり、『ファウンデーションの彼方へ』、『ファウンデーションと地球』、『ファウンデーションへの序曲』、『ロボットと帝国』、『夜明けのロボット』(すべて早川ハードカバー版)を各100円でゲット(^^)。ヤター!!
でも結局読まないんだろうけど(^^;ゞ。

BGM>「シカゴ\〈偉大なる星条旗〉」(1975)←今きくとニューロックにあるまじき通俗性が鼻につくね、昔は感動したけど


長瀧五郎『市岡パラダイス』(講談社)読了。 投稿者:管理人  投稿日: 1月16日(火)21時34分28秒

「大阪物語ともいうべきドラマも、文筆家が書く大阪紹介も、学識経験者という人々の大阪論も、大阪と言えば横堀川であり船場だ。
北は曽根崎あたりから、南は難波・天王寺である。東は上町・寺町・地蔵坂だ。大阪の西は全く紹介されていない。それは知らないのだと思う。
俗に築港線と言われる野田・福島・川口・本田・九条・松島・市岡元町・夕凪橋など、特に市岡元町については、その紹介も皆無に等しい。心斎橋や道頓堀だけが大阪ではない。」
と、著者は言います。

「沼を埋め立てて市岡新田を整地し、住宅が建ちはじめた大正末期から、遊園地・市岡パラダイスを中心に住みよい場所として繁栄した市岡を紹介しないといけない。
[・・・]誰も知らない、誰も書かなかった、いや誰も書けない市岡の、昭和元年から戦争の始まる昭和16年までの、市岡の歴史というものを紹介したい。」
という意図でまとめられたのが本書です。

著者は落語作家、放送作家ですが、もともとは市岡にある寺の次男坊で、市岡界隈に暮らした(最初の確かな記憶のある)6才から(応召して入隊する)22才までの16年間の、いわば青春記なんです。

読み終えて、そのまま最初のペ−ジに戻り、私はつづいて二度読んでしまいました(徹夜しちゃいましたよ(^^;ゞ)。うーん、最高ですー!!

持ちネタを全部著者の前で演じて、
「ボン、ボンに聞かせるはなしは全部してしもた。もう、わたいにはなんにもおまへん。頭の中はからっぽや。ボン、お達者でな。ほなサイナラ」
といって、翌朝首をくくった桂ざこばのエピソードはすさまじいですし、
ひどい貧乏暮しで教科書も鉛筆も帳面もないのに明朗優秀なゆみちゃんのエピソードほど、哀切きわまるものはないでしょう。
他のエピソードもひけを取りません。ほんまかいな、と思うほどよくできているのですが、本当なんでしょう(^^)。

この本はおすすめです!見つけたらぜひお読みください。

私、実は本書にも出てくる「野田の藤」の下福島公園の隣りに18才まで住んでおり、
しかも「中等学校野球で有名な学校があった。市岡元町2丁目の電停前だ」と言及される(今も同じ場所にある)旧制中学(の後身の高校です、もちろん(^^;)に進んだ者でありまして、
従って時代は違いますが、同じ年頃を、まさに同じ空間に生活していたので(しかし<市岡パラダイス>なんて遊園地があったのは知らなかった)、それだけに感懐もひとしおなのですが、
そんなことは無関係に本書は一読の価値アリです。

特に蜆川和尚さまにはオススメいたします(^^)。当時のお寺さんの生活を読むと、わが身と引き比べてガクゼンとなさるのではないでしょうか。逮夜回向なんてやったことありますか(^^;ゞ。


法人資本主義 投稿者:管理人  投稿日: 1月15日(月)22時41分05秒

Yさん
「まぼろしのペンフレンド」は、ハルキ文庫では『閉ざされた時間割』のタイトルのもと「閉ざされた時間割」と合本になっているので、春樹事務所もちょっとタイアップしにくいでしょうね。

奥村宏『解体する「系列」と法人資本主義』(現代教養文庫)読了。
現代の日本社会は「会社本位」社会であり、「会社絶対主義」とでもいうべき原理で貫かれている。これを法人資本主義として著者は規定します。

それは大企業を中心に組織され、大企業によって管理された資本主義であり、大企業が多数の企業を(内部化するのではなく)系列化し(二重構造の活用・リスクの外在化)、そして大企業同士が相互に結合することによって(株式相互持ち合い)成り立っていました。

これは日本独自の存在形態であり、これによって70年代の日本の繁栄はもたらされたのだが、株式相互持ち合いは虚構の株価つりあげを招来し80年代の「大投機時代(バブル)」へと走らせました(株主割り当て・額面発行から時価発行増資への移行)。

その結果大企業の管理主義に破綻が生じ(4大証券と発行会社によって管理されていた株式の需給関係が管理不能となり)、ついに90年の株価大暴落に至るのです。91年の証券スキャンダルも管理不能化の結果であり、法人資本主義(会社本位主義)そのものがひびわれを呈し始めていると著者は言います。

すなわち日本的な(出世原理とノルマ制による)会社本位主義では立ちいかなくなっているのであり、新しい企業像が模索されねばならないと。著者は個人レベルでは会社人間からの脱却、企業レベルでは大企業の解体による「第3のイタリア」的方向への移行によってフォ−ディズム(大量生産・大量消費主義)時代の終焉に適応していくべきではないかと示唆します。

実に体系的な所論であり、刺激的で明快です。読んでいて本当に頭がすっきりします。本書の議論にも、私はセンス・オブ・ワンダ−を感じてしまうのですが、そういうことを別にしても、本書は多くの人に読んでほしい現代の必読書だと感じました。


超古代史の愉しみ 投稿者:管理人  投稿日: 1月14日(日)16時40分28秒

佐治芳彦『謎の宮下文書』(徳間書店)読了。
ミステリの愉しみの原理は、作者が作中にばらまいた諸<手がかり>から探偵(読者)が真犯人を特定する、一種帰納論理の愉しみであるといえましょう。
もちろん作者の側から言えばそれは逆で、まず「真犯人ありき」なのであって、真犯人を真犯人たらしめるための諸<手がかり>が演繹的に考えられ、作中にばらまかれる訳です。すなわちミステリ作家自身の創作の愉しみは演繹的であることになるかも知れません。

超古代史の愉しみ方は、実はミステリ作家の愉しみに近い。というかミステリ作家の創作過程を追体験する愉しみに近いといえるのではないでしょうか。
本書で言えば、古史古伝のひとつ宮下文書が真であるとしたら、それはどのような条件においてであるか、という命題に答えるために、作者が提出する諸<仮説>の、その出来不出来を愉しむ、ということになります。

結局それらの諸仮説が論理的に首尾一貫していて、読者に宮下文書が真であることを納得させられるかどうかがその愉しみの質を保証するわけです(この手の本の質が悪いやつは、持ち出してくる仮説どうしが矛盾し始めることが多い)。
その為に作者は、それを担うにたる理屈を古今東西の資料から探してこなくてはならない。
その意味で、閉鎖系で成立するミステリとは逆に、超古代史は開放系において存立しうるといえる。もとよりその真は、現実的な(史的な)正しさとは別種であることは言うまでもありません。あくまでもゲームなんですから。

もちろん超古代史の作家たちが皆この原理に気づいているわけではなく、いわば「信念」派の人もいるわけで(古代史物で言えば郷土史観家に対応)、そう言う人の作物は当然面白くない。

本書の著者は、その原理が見えているほうなので、私も愛読しています(最近はご無沙汰でしたが(^^;)。本書も前半は面白かった。しかし後半がちょっと夢から覚めたというか正気にかえりかけていて(笑)、つまりこの<時間線>に合わそうとしすぎて話が小さくなってしまった憾みが残ります。竜頭蛇尾の典型で、超古代史にはこのパターンは多いのですが(^^;。

BGM>「コレソン」小野リサ(2000)


まぼろしのペンフレンド 投稿者:Y  投稿日: 1月13日(土)21時58分09秒

こんばんは。私も今ビデオを見たところです。
該当部分を読み返しながら見ているのですが、
ああ、こういう風になってる!という発見が楽しいです。
今回は伊原さんの活躍シーンが増えていて、いいなあと思いました。
主人公の家にあるパソコン?がオブジェみたいで
「近未来」しています。

原作のラスト、すごく好きなのでどうなるか楽しみです。


「まぼろしのペンフレンド2001」 投稿者:管理人  投稿日: 1月13日(土)21時43分01秒

第2回をようやく見ることができました。といっても気が付いたら6時20分だったので、わずか10分だけですが(^^;。
なるほど、2001が付された理由を納得(^^)。
でもさすがに10分では、何が何やらさっぱり分かりません。

というわけで――
「まぼろしのペンフレンド」読了。いやー面白いです! 1時間余りで読了。主人公とコミュニケーションをとるうちに、しだい次第に人間らしくなっていくオリジナルアンドロイドの本郷令子が可哀想でいじらしい。

この素晴らしい話を、テレビドラマはどう料理していくのでしょうか、興味津々です(^^;


宇宙船[スロッピイ号]の冒険 投稿者:管理人  投稿日: 1月12日(金)22時09分29秒

今年の眉村先生の年賀状は、自作のゴム版でした(^^)。
帝国海軍風の初日の出を背にタッキー君(卓ちゃん人形)がバンザイをしている図(^^;。
ナイスです!!(と、さりげなく自慢(^^;ゞ)。

横田順弥『さらば地球よ!――宇宙船[スロッピイ号]の冒険――』(徳間文庫)読了。
本書をひとことで言えば、ショ−トショ−トの積み重ねによる長編宇宙SF(?)といえましょう。宇宙調査のために恒星間宇宙へと船出した宇宙船[スロッピイ号]の冒険(?)の数々をショ−トショ−ト形式で綴っていくという試み。

泰西にはバンチのモダーニア・シリーズという同様の試みが先行しますが、本邦では、少なくとも私は初見でした。
バンチ作品のように無数のショートショートを積み重ねて、結果ものすごいセンス・オブ・ワンダ−に満ちた世界が開示されるようなものを期待したのだが、そういう風にはならない。むしろ4コママンガの集積を読んでいるような印象でした。

したがってベスト5はオチのインパクトで決めました(以下、掲載順)。
スペースオペラ(?)の開幕にふさわしい壮大(笑)なるオチ>「メッセージ」
うまい!と膝を叩くオチ>「ある患者」
オチではなく余韻の>「宇宙怪物ハンター」
自分が冷蔵庫であると思い込んだ男のハタ迷惑>「妻たちの会話」
250億年前に作られたコンピュータの望みは>「漂流物体Z」

BGM>「スウェーデンの城」ヨーロピアン・ジャズ・トリオ(1989)


亞羅叉の沙 投稿者:管理人  投稿日: 1月10日(水)21時35分29秒

ヘテロ読誌の12月分で、眉村卓『ねじれた町』を筒井康隆が誉めていたはずだが、どこで誉めていたか思い出せないと書いたら、名張人外境の中さんから、『日本SFベスト集成』ではないかと示唆を頂きました。
さっそく本棚をかき回したら・・・ありました(^^)。中さんのご指摘どおり、74年度版の日本SFベスト集成の解説でした。

――誰も評価しなかったようだが、この年、眉村卓が書いたジュヴナイル長篇「ねじれた町」は異様なムードをもつ傑作であった。むしろ成人向きの話ではないかと思えるほど強く伝奇的な傾向を持っていて、身の毛のよだつ部分も少なくない。シリアスな中篇連作「司政官」も、週刊誌の書評などで不当にも酷評を浴びていた。むろん、大きく意味をとり違えて評価しているのであるが、シリアスなSFほどこういう扱いを受ける傾向はまだ当分続きそうに予想でき、くらい気分になる。――(徳間ノベルス版278頁)

解説によると、この年山田正紀が23才でデビューしているのですね。豊作の年で、本書収録作品も傑作目白押しです。
小松「夜が明けたら」、筒井「佇む人」、田中光二「スフィンクスを殺せ」、河野典生「トリケラトプス」、そしてかんべむさし「決戦・日本シリーズ」(^^)。
おお、亞羅叉の沙「みゆきちゃん」も載っていますね。ところで亞羅叉の沙って知っていますか? 何を隠そう、今をときめく牧野修そのひとです!当時高校2年生のデビュー作品が「みゆきちゃん」。いや懐かしい(^^;。
SFバブル期開幕の年でした。

BGM>アトランティス/キーストン・コーナーのマッコイ・タイナー(1974年8/31,9/1録音)


柄谷行人の 投稿者:管理人  投稿日: 1月 9日(火)20時03分32秒

『批評とポストモダン』(福武文庫)読了。著者の本には、常に刺激を受けるのですが、その刺激は、SFのセンス・オブ・ワンダーに似ています。

たとえば本書でも何度か言及されるマルクスの有名な「宗教はアヘンである」という文言は、一般的理解である「宗教批判」として発言されたのではなく、「宗教批判」への批判として書かれたのだと著者は言います(これが正しいのかどうかは私には判断する蓄積がありませんし、そんなことはどうでもいいのです)。この辺の(一般知からの)転倒が快感なんです。

すなわち大衆が宗教に救いを求めるのは現実的な不幸があるからで、それを批判(啓蒙)したって仕方がないのであって、宗教批判は宗教を必要とさせる現実世界の批判にとって変わらなければならない、と。
なるほど、それはそうですよね、理屈です。
この「なるほど」という言葉が含意する快感は、一般知の視点からぐんとカメラを引いたときの、より高次のパースペクティブに移行した快感であるわけで、それはSFのセンス・オブ・ワンダーに等しいと思うのです。

以前から気にしてたのですが、現象学的還元において自然的態度をカッコで括る「私」の根拠は、一体どこに求められるのだろうか、という根源的疑問に対して実は目をつぶっていました。というか、考えても分からなかった。

しかし柄谷を敷衍すれば、それは自明な「空間」をカッコに入れることによって「場所」を見出すということであり、自然的態度への疑いを呼び起こすのは、差異化としての、そのような「場所」の確保によって「私」が対象に対して「異人化」(シュッツ)することによってであることになります。なるほど納得であります。

しかもなお、著者の鋭いところは、そのうえに「現象学そのものをもたらすようなその「場所」は(その場所に立つ限り)、現象学的な対象ではありえない」ことを論理的に導いている点であり、この対象外の「場所」を還元するためには、「私」はさらなる「場所」を見出さねばならず、それは際限のないイタチごっこであり、すなわちメルロ=ポンティの「現象学的還元は無限に続く」(大意)というテ−ゼにスポンとはまります(^^)。

かくのごとく「場所」という言葉の導入で、フッサ−ルのなかにシュッツとメルロ=ポンティと(したがって構造主義人類学と)をたたみ込んでしまう強腕は、まさにこの上ないセンス・オブ・ワンダーではないでしょうか!

逆にいえばセンス・オブ・ワンダーがSFだけの特権ではないことを証明しているのかも知れませんが(^^;。
読めば頭がすっきりする快著でした。

BGM>「ロカルナヴァル」オス・ノーヴォス・バイアーノス(1976)


√4004001 投稿者:管理人  投稿日: 1月 8日(月)21時02分53秒

河本さま

ようこそお越し下さいました。お待ちしておりました。
それにしてもスーガク者らしいおたより、ありがとうございました(^^)。パソコンの関数電卓で計算しましたら、ピッタシ2001になりましたー(>あたりまえ(^^;)。

早速「ヘテロ読誌」を見て下さったんですね、ありがとうございます。
『エンデュミオン・エンデュミオン』、論理より感覚って感じですが、なかなかよかったです。

某所ネタですが、「もしも、電子レンジが年に100万回の事故を起こし、それで人が1万人も亡くなるとしたら、だれもそれを家電とは認めないはず。けれど、車は道具として使われている。これはおかしいと思う」というのは真理だと思いました。逆にいえば「現代生活のためには、1万人の死者は許容範囲」って事でしょうか。怖ろしい話です。
ともあれ、本年もよろしくお願いします(^^)。


アレクすてさま

『ハイペリオン』、誰にきいてもけなす人はいませんから、頂上に着けば素晴らしい風景の筈です。それを信じて、上を見上げず、少しずつ登りましょうか。私ももう少ししたら追いかけますね。


どうもありがとうございました。 投稿者:アレクすて  投稿日: 1月 8日(月)15時25分36秒

大熊様、臼田様どうもありがとうございました。
もう謎のままなんですねえ。「五人対賭博場」。
「クィーン・メリー号襲撃」というのがあるのですか。
ビデオ屋ヘいってみてみます。
MZT 様、もう一回チャレンジしてみます。
ではでは。


2001 投稿者:河本  投稿日: 1月 8日(月)12時29分26秒

 大熊様
 明けましておめでとうございます。-10^4-85^4+2631^4+2769^4-3214^4 年もよろしくお願いいたします。4乗数を足したり引いたりしてぴったし2001にするのは、かなり難しい。(^^;;;;
 「エンデュミオン・エンデュミオン」の書評を拝見して、読んでみたくなりました。
 単行本を買うのは久しぶりです。


眉村ドラマ 投稿者:管理人  投稿日: 1月 8日(月)10時23分34秒

こんにちは、管理人です。
本日名張人外境にヘテロ読誌2000年12月が掲載されました。
今回は上遠野浩平『ぼくらは虚空に夜を視る』/平谷美樹『エンデュミオン・エンデュミオン』/北原尚彦『SF万国博覧会』/眉村卓『ねじれた町』/眉村卓『深夜放送のハプニング』/浜尾四郎『殺人鬼』
の6冊です。お読み頂ければ嬉しいです。


アレクすてさま

以前話題になったフィニー「五人対賭博場」ですが、臼田惣介@読んでも死なないさまからご回答を頂きましたので、掲載します。


いよいよ21世紀ですねぇ。今年もよろしくお願い致します。
メールどうもありがとうございました。年末にも頂戴したのに、返信もせず失礼致しました。
年末から年始、バタバタと忙しく、実家に帰省などもしておりまして、お許しください。

さて、今頃になってもう意味はないかと思いますが、残念ながらフィニィの「五人対賭博場」
は未読です。映画はTVの深夜放映で見た記憶があるのですが、原作とちょっと違ってた
ような気がして、調べたら本邦未公開となっていて、TV公開だけされたのかどうか確かめ
ようと思っているうちに年を越してしまいました。結局定かではありません。主人公の年齢
が違ってたような・・・・・よく覚えていませんが。
それはともかく、作品はフィニィらしい一風変わったサスペンス犯罪もので面白いと聞いて
います。読まなかったのは、刊行された頃は、今以上にミステリ、それも古典本格にしか
興味がなく、国内外の名作を読みまくっていたからだと思います。
映画の方はフィニィの「クィーン・メリー号襲撃」なら深夜のTVで見たのを覚えていますが。
これも、同系列のちょっと変わった話でした。
というわけで、お役に立てず、すみませんでした。


劇場公開はされなかったんですねえ。
タイトルから想像すると、5人の男女が機知と計略でイカサマ賭博をして賭博場から大金を巻き上げるという痛快話ではないんでしょうか?

それにしても臼田さまには、年の瀬の大変なときにお気を煩わせまして申し訳なかったです。ありがとうございました。
なお上掲の臼田さんの「読んでも死なない」ですが、年始早々掲載された「時の誘拐 芦辺拓」が力作です。
――実作では正統本格に邁進し、しこうして編集者としてはやや論理が破綻するタイプの戦前戦後のミステリの発掘に傾注するこのアンビバレンツは一体いかなる精神の所産なるや?
芦辺拓ベスト3も発表されています。ぜひお読み下さい!


Yさま

>幻のペンフレンド2001」始まりましたね
しまった!見忘れた!!
ごめんなさい、来週はしっかり見ます(T_T) どうも土曜日の夕方ってバタバタしているんですよね(弁解)。

>レトロと近未来がいい感じでした
っていうのは何となく分かりますね。
ご覧になった方いらっしゃいますか? 感想を寄せて頂ければ幸甚です。


ドラマいかがでした? 投稿者:Y  投稿日: 1月 7日(日)23時18分54秒

「幻のペンフレンド2001」始まりましたね。
初めてリアルタイムで見る眉村ドラマです。
レトロと近未来がいい感じでした。


今年もよろしくです。 投稿者:管理人  投稿日: 1月 7日(日)14時40分10秒

MZTさま

筒井さんは作風が何段階かで変わっていきますよね。
それは評論を読むと一目瞭然で、『乱れ撃ち涜書ノート』のときは、まだ「自分はSF作家である」というスタンスで批評していますが、後になればなるほどSFに対する身内意識は希薄になっていきますね。もちろん評論自体の評価とは、それは全然無関係ですが(為念)。

私が好むのは、やはり初期の天真爛漫なドタバタですね。短編集では『アフリカの爆弾』、長篇では『俗物図鑑』でしょうか。この頃のパワーはすごかった!
その後はどんどん「気難しく」なってきてドタバタもあまり楽しめなくなっていきました。

かんべさんとの比較となると、初期の筒井はやっぱり押さえておく必要があるでしょうねえ。しかし「気難しさ」というのも、案外かんべ作品にも共通するキイワードかも(^^;。

ところでMZTさんの掲示板ハイブリッド・シティでは、今ギャリコで盛り上がってますね(^^)。私は未読で参加できないのが残念ですが、昔70年代にキャメルというブリティッシュロックグループが、「白雁」にインスパイアされたトータルアルバム「スノーグース」を出しています。一応お知らせまで(^^;。


も、もったいないです…… 投稿者:MZT  投稿日: 1月 7日(日)04時01分07秒

MZTです。今年もよろしくお願いします。

アレクすてさま>
はじめまして。『ハイペリオン』ですが、なんならば第4章「教授の話」から
読むことをオススメします。ぼくも当初は分厚くて小難しいSFかと思って
敬遠していたのですが、これほどSFの王道を行くような面白い小説はないと
思っています。ダン・シモンズの作品構成の巧さには目を見張ります。

大熊さま>
分厚さというのは心理的な抵抗感がありますね。ぼくもそれで損をしている
口でした。『ハイペリオン』はとりあえず別格なので、お勧めしておきます。

筒井康隆を今読もうと思案中。初期作品はあまり読んでいないので、とりあえ
ず立風から出ていた『新宿祭』とか読んでおこうと思います。かんべむさし
との比較もそろそろきちんとやりたいと思っていますし。




「エアポート98」 投稿者:管理人  投稿日: 1月 4日(木)22時37分26秒

アレクすてさま
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

>『ハイペリオン』挫折しました
そうですか、最近のSFは「これでもか」と言うほど分厚く書き込みされてますから、読むのがツライですよね。
私の場合は、300ページ前後というのが、どうも最適のボリュームのようです。黄金期の名作って大体それくらいでしょう?

yagyuさま
昨日はお疲れさまでした。yagyu節炸裂で楽しいひとときでした。心にたまった垢がきれいに洗い流されたような気持ちがいたしました(^^)。
ロキシー・ミュージックのMDありがとうです。ばたばたしててまだ聴いてないのですが、今日寝る前にでも聴かせていただこうと思います。

さて、今年の三が日は全然本が読めなかった。そのかわりビデオをたくさん見ました。
アルマゲドン、ディープ・インパクト、エアポート98、ブリザード、コンゴ、マトリックス、ハムナプトラ。どれもそらさない面白さでした。
特にエアポート98は、おんぼろのセスナで単身サンフランシスコからハワイを経て、途中迷子になるも付近を航行中の旅客機の機長の判断よろしきを得てオークランドへ無事到着するという話。特撮CG目白押しの中にあって、極めて素朴なこの映画が好印象でした。

もともとブリコラージュ仕事的なストーリーというか、アメリカ的物量主義ではなく、そこらへんにあるものを工夫して何かをなし遂げる、というような話が好みなんです。昔、山田正紀がそんな話を好んで書いていましたね。
流行のサイバースペースものばかりではなく、そういう素朴なSFをまた読みたいと思いました。


あけましておめでとうございます 投稿者:yagyu  投稿日: 1月 4日(木)10時10分12秒

きのうはお疲れさまでした。
急用で「風の翼」宴会に遅刻・欠席かもという連絡があって、さびしいなと思ってたのですが、結構早く会えてよかったです。

MDもありがとうございました。

ちゃんとBBSも、伝説も読みましたよ。今年もよろしくお願いします。


明けましておめでとうございます。 投稿者:アレクすて  投稿日: 1月 3日(水)23時54分36秒

『ハイペリオン』挫折しました。
用語や引用がたくさんあって読めません。
というわけで神林長平氏の
『敵は海賊』シリーズを読んでます。
(新年早々ですが、スタミナがありません。)


賀正 投稿者:管理人  投稿日: 1月 1日(月)22時08分25秒

新年おめでとうございます。

元旦早々「月刊センター」ホームページに眉村さんのショートショート「バイリンガル」がアップされています。どうぞお立ち寄り下さい。

またYさんの眉村卓ワンダー・ティー・ルームの読書録関係が更新されています。こちらもぜひお立ち寄り下さい。

ところで私の「ヘテロ読誌」がお世話になっている人外境ご主人のHP「名張人外境」がリニューアルされ、URLも本日より変更されているようです。ご注意下さい。
新しいURLは→http://www.e-net.or.jp/user/stako/menu.html です。
リニューアルされた「名張人外境」から、「とべ、クマゴロー!」にリンクをはっていただきました。ありがとうございました>人外境ご主人さま。

なお此処で書くことではないかも知れませんが、何人かの方からお問い合わせいただいております恒例「人外境大宴会」についてですが――
一月中に開催する腹づもりです。日程については1月3日の「風の翼」新年会で人外境ご主人と会いますので、その時に詰めたいと思っています。今しばらくお待ち下さい。

ということで、本年も昨年と相変わりませずよろしくお付き合い下さい。


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