【掲示板】


ヘリコニア談話室ログ(2002年9月)


あれ? 投稿者:管理人 投稿日: 9月30日(月)18時38分27秒

<光世紀パトロール>シリーズが見つからない。
買った記憶は確かにあるんですが・・・おかしいなあ、、、


堀晃『恐怖省』より 投稿者:管理人 投稿日: 9月29日(日)21時35分40秒

「蒼ざめた星の馬」、「宇宙葬の夜」を読む。
いずれも情報サイボーグという、人間(生体)でありながら情報端末でもある両義的存在の「死」を扱った作品である。
前者においては、生体の老化と情報端末である超LSIとしての存在理由を調整するために仕組まれた「温情」が、後者においては、生体の死と超LSIへの停止命令が同時に起こる「幸せ」が描写される。
とりわけ後者では、情報サイボーグの死と、星系の死をオーバーラップさせる構成が、何ともいえぬ余韻を響かせる。

以上で短篇集『恐怖省』(集英社文庫)読了。
いやあ、宇宙小説を堪能しました(^^)。


オルメカ文明は秦の遺民が建てたのか? 投稿者:管理人 投稿日: 9月29日(日)18時06分57秒

原田実さんのHPが更新されていました。→古代中国人のアメリカ渡航説について

さっそく読ませていただきました。
古田武彦も縄文人=エクアドル渡航説を展開しましたが、本稿は中国人の南米渡航説の数々を文献から渉猟し、いつものようにわかりやすく整理してくれています。

個々の説は単発的で系統だった研究史があまれることはなく、したがっていったん忘れ去られた説が「新説」を称してよみがえるということが繰り返されてきた。その歩みをたどることはたしかに不毛にも思えるが、構成の人が同じ轍を踏むのを避けるためにも、このあたりで徹底的に見直す必要があるのではなかろうか。/

とおっしゃるように、この手の説は、一種の<と>扱いされるため、全く無視されてしまうか、あるいは「無視」をいいことに勝手放題の珍説が乱舞するか、の両極端になりがちです。
原田さんの業績は、そのような分野の議論を、無視ぜず、しかもただすべきはただす、という姿勢で整理されているところです。
非常に興味深い話が続出するんですが、一つだけ反応してみたいと思います。

 中国の石鐘健氏はこの石製品と中国側の出土品を詳細に比較し、それは前二千年紀から前千年紀にかけて、浙江省を中心に活躍していた越人の船団が残したものであるとした。石氏によると、越人が用いたのと同じ石斧が南太平洋の島々やエクアドルで出土しており、彼らの船団の航路が中国から両米大陸にまで延びていたのは明らかだという(『朝日新聞』一九八三年五月五日付、他)。

という記事について――
越人がインドネシア系(オーストロネシア系?)漂海民であるなら、南太平洋の島々に同様の石製品が存在するのはむしろ当然であり、かれらが中国沿岸に到達したのだから、同じ確率でエクアドル沿岸に到達した可能性も十分あり得る。もし仮に石製品が同型であると確認されたとしても、別に越人が南米に到達したと考える必要はないはずです。
こういう視点もあり得るという議論が出てこない点に、結局同説主唱者たちの「意識せざる意図」が垣間見えているように思われます。
でも、秦人が越人の船団で、オルメカの港に到着するところを想像するのはとてもたのしい(^^;ゝ

編集済


『恐怖省』(集英社文庫)より 投稿者:管理人 投稿日: 9月28日(土)18時59分49秒

表題作と「過去への声」を読む。
表題作は、<標的ナンバー10>風にはじまるハードボイルドタッチの傑作。
この作品にも光瀬龍の影響が色濃く感じられる。
<未来社会テーマ>としても読めるもので、訓練されて選別されるエリートとしての「情報サイボーグ」という設定には、眉村卓の「産業将校」がダブって見える。
要するに、作品世界に<第1世代>的雰囲気があって、個人的に非常に懐かしい既視感を覚えた。
一方、前作でも感じたが、この「情報サイボーグ」、後の<電脳>ものを先取りしており、その意味では10年(20年?)早すぎた作品でもある。著者の先見性に驚かされる。
かかる懐かしさと新しさの共在は、著者のSF界におけるポジションとも重なるようで興味深い。いろんな意味で、堀晃は第1世代と現在を繋ぐミッシングリンクなのではあるまいか。

「過去への声」は、一転してマクスウェル電磁方程式のホイーラーとファインマンの解釈(実はよく判ってない(^^;)にもとづく過去の改変を扱ったワンアイデア・ハードSF。私は、石原藤夫のハードSFの雰囲気を感じた。
編集済


大日本雄辯會(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 9月28日(土)10時40分36秒

石川誠壱さん

いつも時宜を得た書き込み、ありがとうございます。

>そいうものばかりを専門に売っていた会社が、「講談社」です。
はい、そのとおりでした(汗)。
講談社の由来はある程度知っているつもりなんですが、当のコンテクストにおいては講談社のことは念頭に浮かびませんでした。
というのは、私の文章が拙かったのですが、講談社は、例えば南陵先生が積極的に関わられたように、実際に高座に掛けられ速記者が速記したものを、読み物として売り出したのではなかったでしょうか?

私が表現したかったのは、「高座に掛かり、速記されたもの」と(ある意味)偽って出版された「最初から読み物として書かれた」講談本(疑似速記本)という分野があったんですね、といいたかったのですよ。言葉足らずでした。

けれども講談社本でも、そういう疑似速記本はあったかも知れませんね。
これも一度南湖さんに聞いてみますが、しかしながら、実際のところ「夢の世界」が、速記本の体裁を装っているように、今となっては、その実態知ることは難しいかも知れませんね。研究者がいらっしゃる可能性はあるでしょうが。


新事実が!! 投稿者:管理人 投稿日: 9月27日(金)21時57分46秒

「多田省軒」は「上司小剣」(かみつかさしょうけん)の変名ではないか、という意見が寄せられました。
上司小剣(明治7年-昭和22年)は作家で、もと読売新聞記者。家業が神主で、なんと「多田神社」に縁があるものだそうです。
時代もあっている。「夢の世界」は明治37年刊行。明治37年といえば上司小剣は30歳。すでに上京して読売新聞に在籍しています。
うーむ、なんか関係がありそうだ。


宇宙時計が止まるとき 投稿者:管理人 投稿日: 9月27日(金)20時00分58秒

大江さん
>伊藤も遠山も弓長も成本も西川も、まだまだ勿体ないなあ
マウンドに立つだけで観客を喜ばすことができるキャラクターを持っていましたもんね。

>もっと義理と人情を大切にしてもらいたいものです
ほんまほんま。人情を忘れた組織は、いつか求心力をなくしてぽろぽろとくずれていってしまいます。

遠山は引退とか。残念です。他の面々はどうするのでしょう?

臼田さん
それでは次回は、遠慮なく電話させていただくことにします。
しかしそうなると、本格的な呑みになるだろうから、車はダメですな・・・

南湖さん
でも本格の隆盛のさなかに永眠されたんですから、満足だったのではないでしょうか? 合掌。

>「夢の世界」は私が初めて口演したという可能性が充分にあります。
おお! すると、「読みものとしての講談本」という分野があったのですね。

>「蝿男」に変更するかも分かりません。
楽しみにしております!

堀晃『恐怖省』(集英社文庫)より、「ペルセウスの指」「コスモス・クロック」を読む。

「ペルセウスの指」は光瀬龍ばりのひえびえとした無常観ただよう傑作。のちの<電脳>ものを先取りしたような内容だが、「都市と星」を継承分岐発展させたような話でもある。そうか、<電脳>ものの始祖はクラークだったのか!

「コスモス・クロック」>これぞ本格宇宙SF!!
<袋小路におちいった種族>ものとしては、眉村卓の名作「正接曲線」がまず思い浮かぶが、本編の種族は「凍った中性子星」(コスモスクロック)が原因で<閉じたループ>を形成する。そうして人類の存在する意味(恒星系へ進出することの意義)が明らかになるが、それは皮肉な結末だった・・・


鮎川先生のご冥福をお祈りいたします。 投稿者:旭堂南湖 投稿日: 9月27日(金)01時22分31秒

本当に残念でなりません。

>管理人様 「名探偵ナンコ」ご来場有難うございます。管理人さんのご指摘とおりあの「夢の世界」は私が初めて口演したという可能性が充分にあります。完全版もやりたいのですが、なかなか高座に掛ける機会がありませんね。また、一年後になるのかもわかりません。お楽しみに。さて、次は11/24(日)です。海野十三の「俘囚」をやるぞと予告したのですが、皆様の意見を聞きまして、ひょっとすると「蝿男」に変更するかも分かりません。是非お楽しみにしていて下さい。


(無題) 投稿者:臼田惣介 投稿日: 9月27日(金)00時08分45秒

管理人 殿

中華料理屋と言えば、「漫楽」でしたっけ。昼はいつもいっぱいなので、あまり利用した
ことは無いのですが。
今日は9時頃まで会社にいました。もちろん、次にお出かけの折は是非ご連絡ください。
会議等で都合の悪い時は、失礼をさせて頂くかもしれませんが、お電話を頂くのは全く
問題ありませんので、楽しみにしております。
今日は、「ロストワールド」のビデオを始めて撮りわすれました。ちょっと悲しい。
では。


一挙に8人、戦力外通告 投稿者:大江十二階 投稿日: 9月26日(木)23時46分29秒

伊藤も遠山も弓長も成本も西川も、まだまだ勿体ないなあ、と思ってしまいます。伊藤なんて、あれだけ阪神に貢献してきたのに、あまりにも冷たい扱いだと思います。
パリーグだったらまだ良いのですが、セリーグの他球団で活躍されたりしたら、悔やんでも悔やみ切れません。
ペタジーにとか金本を引き入れるためのお金を準備しているのでしょうか。それも大切かも知れませんが、そういうものよりも、もっと義理と人情を大切にしてもらいたいものです。

ところで、明日、午後10:45から、WOWOWで、エドガー・アラン・ポーの詩「海底都市」が元になったSF映画「深海の軍神」が放送されます。主演は、あのビンセント・プライスです。


森解任 投稿者:管理人 投稿日: 9月26日(木)22時37分27秒

臼田さん
さっきまで臼田さんの会社の向かいの中華料理屋にいたんですよ!
電話して呼び出そうかとも思ったんですが、お仕事中わるいと思い留まりました。
呼び出しても良かったのでしょうか。


笑っちゃいましたね。 投稿者:臼田惣介 投稿日: 9月25日(水)23時19分40秒

えっ何、あれで巨人が優勝したの、ってなもんで。
いや、久しぶりに痛快、大笑いの夜でした。


今日も勝ちました 投稿者:管理人 投稿日: 9月25日(水)21時49分49秒

ま、今日は勝って当然ですな(^^; 逆に勝たないと問題。

そうか、野村さんはナマ加川良(9/22)をみられたのか、、、うらやまし〜

>大江十二階さん
いやースカッとしましたよね。六甲おろしが終わるのを、ぼけーっと待っている巨人選手のおマヌケさたるや(^^;ゝ
#しかし、今年はタイガースのせいで、10冊は読了本が減ったような気が。

堀晃『恐怖省』(集英社文庫)より、「蜜の底」「沈黙の波動」を読む。
前者は、年中分厚い雲がたれ込め雨が降り続く惑星の住民の悲劇。無限の宇宙空間を実感するすべを持たない種族の末路とは・・・
後者は、「岩」と地震波でコンタクトしようとする話。こう書くとトンでもない話だけれど(実際トンでもない話ですが)描写において不要な要素は一切省かれているので、受ける印象は、ウエストコースト派のジャズのように端正でクール。

<BGM>ナイトライツ/ジェリー・マリガン
編集済


巨人優勝万歳!? 投稿者:大江十二階 投稿日: 9月24日(火)23時28分55秒

やってくれました!
理想的な形になってくれました。
巨人優勝胴上げの前に六甲颪を声高らかに歌えるという醍醐味を味わえたただけで、今シーズンは満足です。もうAクラスにはなれなくても、今日の試合で大満足です。
9回裏の浜中のホームランで狂喜した私は、ご近所の人に迷惑をかけてしまったと思います。
はははははは。あんなカッコの悪い優勝胴上げは初めて見ました。
万歳、万歳、万歳! 今日の試合は録画してあるので、これから、繰り返し繰り返し見ることにします。


よくやった! 投稿者:管理人 投稿日: 9月24日(火)23時12分49秒

いやー、意地をみせたね阪神。
いい試合でした!!


おおっ!!! 投稿者:管理人 投稿日: 9月24日(火)21時01分30秒

森下一仁さんが、ご自身のHP森下一仁のSFガイドトップページに、『探偵講談、乱歩を読む。』東京公演のリンクを、デーンとまんなかに貼って下さっているではないですか!
ありがとうございますありがとうございます!!
これで東京公演も成功疑いなしでしょう。
いや〜、感激ですー!! もう私、これから一生森下先生についていきますです!

さあ、今から名張人外境にも書き込んでこようっと;;;


傑作ハードSF連作 投稿者:管理人 投稿日: 9月23日(月)20時37分03秒

「エインガナの声」、「キャリバンの翼」を読んで、林譲治『ウロボロスの波動』(ハヤカワJコレクション)を読了。
この2作品はかなり繋がった話で、いわば<アグネス・マフィア枝篇群>といえる。

前者において、地球人と太陽系に進出した人々(AADD)の対立軋轢が描かれる。一種心理劇なのだが、はっきり言って作者はこのような描写はまったく下手。紙切り細工の人形のように平板な作中人物がぎくしゃくと動き、喋っている印象。まあスペオペだと思って読めば問題ないのだが、作者自身は、この連作を通して、AADDの社会描写もふくめて、かなり真剣に、ある意味社会学的なものを狙っているように見えるので、そういう意図があるなら(その面では)成功しているとは言い難い。
他方、科学的アイデアの描写は非凡で、銀河系一円に重力波通信ネットワークが広がっている可能性が示唆される。

後者は、点描風の作品で書き込み不足ながら、、当のミニブラックホールへのナノマシン投下実験の結果、内部にプラズマ状の質量が確認される。しかもそれはしかるべき秩序と構造を備えており、かつ自動修復機能がみとめられた。すなわちミニブラックホールの内部に生命の存在が仮定される。そして上述の重力波通信がかかるブラックホール内部に向けて宇宙から送信されていた可能性が・・・。
それらを確認するため、アグネス・マフィアの筆頭株の一人、アグリは、恒星間宇宙船キャリバンを奪取し、単身太陽系のかなた、はるかにひろがる星の海へ飛び出していく・・・という、雄渾にしてスケールの大きな宇宙小説。

そして――エピローグに壮大な仕掛けが施されてあり、読者(つまり私)はあっと驚いて作者の術中にはまる。
うーむ、やられた!
編集済


名探偵ナンコ 投稿者:管理人 投稿日: 9月23日(月)13時03分52秒

昨日は「名探偵ナンコ」の会。1周年ということで、第1回に口演された「探偵講談・夢の世界」が再演されました。
この本は、埋もれていたのを南湖さんが発掘し、復活させたもの。したがって南湖さん以外に演じる講談師はおりません。
プログラムによりますと、


(……)「多田錦海口演」となっておりますから、「なるほど、明治時代にそういう講釈師がいたのだな」と思われるかも分かりませんが、これは当時探偵小説を多く書いていた「多田省軒」という作家の別名です。当時は作家が講釈師の振りをして速記本を書くということがちょいちょいとありました。それだけ速記本が売れたのです。(……)


だそうです。今写していてふと気が付いたんですが、だとしたらこの話は、当時も実際には口演されていない可能性がありますね。
そうしますと、事実上、南湖さんによってはじめて、この話は口演されたということになりますが……うーむ、今度会ったら忘れずに確認しなくちゃ。

さて今回の演目は「怪談・蛤の吸い物」(小夜衣草子より)と、件の「探偵講談 夢の世界」(原作・多田錦海口演、山田玉峰速記)の2本。
「蛤の吸い物」>上方講談では怪談はほとんど演じられることはなく、この話を入れても2本しかないそうです。、特に四谷怪談はある理由で全く封印されているとのこと。その、なんとも戦慄すべきおどろおどろしい理由も、南湖さんの口から説明があり、観客は一同ため息を付いたのでした。
途中でライトが消えたり、舞台の天井に生首が現れたりと、なかなか演出も凝った演し物でした。

つづく「探偵講談 夢の世界」は、本来東京−東北が舞台の話を、大阪−和歌山に置き換えたそうで、ことに天王寺駅周辺は私も土地鑑があるので、実にリアルで目に浮かぶようでした。
明治ものの探偵講談の魅力は、現在からは想像もできない当時の雰囲気が、はからずも伝わってくることで、たとえば7時の時鐘なら、注意を喚起する3連打の後、7つ鳴って都合10回鐘が鳴る、という説明や、天王寺駅を出発する汽車が、漆黒の闇の中、釜の火を反射して煙突から吐き出される煙が(白ではなく)赤く染まっている、などという描写は、現代人にはとても思い浮かばないでしょう、天王寺といえども当時は夜が深かったことが伺い知れたりします。

後半、南湖さんの口調が早くなり、話もいくらか端折っているように感じられました。あとで聞くと、たしかにそうでした。
この本は、きっちりやれば、一時間半はかかる大作なので、45分にまとめるためにずいぶん刈り込んだものだそうです。
実は、現実には45分でもふつうの寄席では無理らしく、よくて20分から30分が限界とのこと。したがって、この話もようやく今回が二回目だったそうで、趣味ではないプロの講釈師としてはつらいところがあるようです(つまり1時間半覚えても金になる可能性がない)。
個人的には、1時間半の完全版を聞きたい気持ちは山々ですが、そんなわけで無理強いはできないのがチトつらいところ。

最後に恒例の芦辺拓さんと南湖さんの対談があり、終わってから、これまた恒例の打ち上げ。今回はたまたま南湖さんの隣に座ることができたので、上述のこととかいろいろ伺うことができました。

さて「名探偵ナンコ」、次回はいよいよ海野十三特集です。
11/24(日)旧関テレにて、遂に、あの「俘囚」が講談になる!!!
編集済


「エウロパの龍」(『ウロボロスの波動』所収) 投稿者:管理人 投稿日: 9月22日(日)10時28分15秒

さて、昨日は畸人郷例会。なかなか盛会でした。
会長の野村さんは、すこし拘束時間が短くなって時間的余裕ができたそうです。現在HPのコンテンツづくりに励んでおられるとのことですが、それにまつわる泣くに泣けない(笑うに笑えない?)秘話を伺いました。まあぼちぼちお気ばりやす(^^;ゝ

「エウロパの龍」は、30ページ足らずの短い短編ですが、短い分すっきりと贅肉が落ちていて、まさにハードSFの粋というべき見事な出来映えです(日本のハードSFは、堀晃作品がまさにそうですが、短編になるほど人間的部分が背景に引っ込むためか、科学的アイデアが直截的に詩情に結実する場合が多いように思います)。

木星の衛星エウロパは、平均10キロに及ぶ厚い氷原の下に豊かな海があり、以前から生命の存在の可能性が論じられていた星だ。
人工降着円盤によって無尽蔵のエネルギーを得たAADDは、そのエネルギーをピンポイントで氷層に照射し、直径100メートルの穴をあけることに成功する。
最初、反陽子の対消滅をエンジンの熱源とする潜水艇が調査に出発するが、巨大な龍におそわれたというメッセージを残して行方不明になる。
その救助にディーゼルエンジンの潜水艇<コバンザメ>が投入される。ディーゼルは燃料電池に比べるとエネルギー効率は悪いが、熱源込みで考えるとそう捨てたものではないという。
コバンザメも何か得体の知れない存在の体内に取り込まれるが・・・

今回も、超自然的対者の正体は、因果関係の糸車に巻き戻されすっきりと解明(一応)されます。
本編の主人公黒川は、「ウロボロスの波動」の副主人公の26年後の姿だ。このシリーズはある作品の脇役が別の作品で主役を演じたりするようです。そういう伏線を張りすぎると、「ヒドラ氷穴」のように冗漫さを感じさせることになるようです。この案配が難しいところです。
編集済


ようこそ! 投稿者:管理人 投稿日: 9月22日(日)09時27分34秒

天羽さん

いらっしゃいませ。
20周年パーティではお世話になりました。とても楽しかったです。

>こんどはもう少し少人数で飲みましょうね。
ぜひぜひ、よろしくお願いします(^^)

>最初に書き込んだとき、なんかホストから撥ねられてしまった
Teacupに問い合わせましたら、以下の返信が来ました。

 件名 アクセス制限に関するお詫び

 このたび、****(プロバイダ名)経由の大量の迷惑行為があり、弊社システム部門により、
 発信元プロバイダ経由の全掲示板へのアクセスを一時的に制限せざるをえない
 状態となっておりましたが、プロバイダとのお話し合いにより、アクセス元の
 判明手順と迷惑行為の再発防止が明確になりましたので、現在、元の状態で運
 営を再開しております。

 ****ご利用中の一般の皆様には一時的にご不便をおかけいたしましたが、
 今後も迷惑行為に対しましては、より発信者を絞り込んだ上でのアクセス制限、
 迷惑行為の抑止に努め、皆様に気持ちよくご利用いただけますよう運用してま
 いります。

 今後ともご利用、ご協力のほど、是非よろしくお願いいたします。

 ティーカップ・コミュニケーション運営担当

いやはや、はた迷惑な輩がいるんですね。
何はともあれ、失礼しました。

  #そういうわけですから、他にもアクセスできなかった方がいらっしゃる可能性がありますね。
  #もしいらっしゃったら、今一度トライしてみて下さるとありがたいです。

それはそうと、某サイトの書き込みは笑っちゃいましたよ(^^;ゝ
またお越し下さいね。


Re: プロ生活20周年 投稿者:天羽孔明 投稿日: 9月21日(土)20時37分17秒


> 昨日はSF作家草上仁さんのプロ20周年記念パーティにお招きをあずかり、
> 行ってまいりました。
> 主催のファンクラブまぶだちの会の会長さんと一度面識があったので招んで
> 頂けたようです。

 え〜、こちらには初めて書き込みをさせていただきます。ワタシが草上仁公認FC
「まぶだちの会」の会長、天羽孔明です。


> 非常に和気藹々とした和やかな会で、気が付けば3次会まで居座ってしまいました

 とりあえず楽しんでいただけたようで、主催したこちらとしてもうれしく思います。
 ぼくは、パーティに参加していただいた多数の人と話まわっていたので、大熊さんとはそれほど長く会話が出来ませんでしたね。また機会があれば、こんどはもう少し少人数で飲みましょうね。

 では、また・・・。



PS,最初に書き込んだとき、なんかホストから撥ねられてしまった為、タイミングのずれた
   返信となってしまいました。ごめんね。(^_^;


                                 天羽 孔明


探偵講談東京公演のお知らせ 投稿者:管理人 投稿日: 9月20日(金)22時25分29秒

 旭堂南湖さんのHP「正直南湖」に、東京公演の詳細が出ていました。
 以下にコピーします。

  ●『探偵講談、乱歩を読む。』東京公演
  日時/2002年11月2日(土)
  開場/15:30 開演/16:00
  会場/東京都豊島区民センター6F文化ホール(279席)
  料金/前売800円 、当日1000円
  出演/旭堂南湖
  演目/「乱歩一代記」(作・芦辺拓)「二銭銅貨」「魔術師」(原作・江戸川乱歩)
  主催/三重県名張市・名張市教育委員会・東京豊島区
  後援/東京都豊島区教育委員会・(財)豊島区コミュニティ振興公社
  チケット販売/(財)豊島区コミュニティ振興公社チケットセンター

 >万難を排してお越し下さいます様お願い申し上げます。
 >大きな会場です。お友達を誘って一緒に来て下さいね。

 という南湖さんのメッセージがすべてを語っています。279席はというのは先日の東京公演のほぼ10倍のキャパなのです。
 わずか一ヶ月半後という時間の短さを考えると、とんでもない数字にみえます。
 この掲示板をご覧の皆様のなかに、東京の方がどれほどいらっしゃるのかわかりませんが、どうか万障お繰り合わせて、お出掛けいただけたら幸甚です。また各方面での宣伝活動も、併せてお願いいたします。

――そういえば、恒例の「名探偵ナンコ」も、明後日22日(日)ではありませんか。
いつもと同じく旧関テレにて、6時開場6時半開演です。ぜひぜひお運び下さいませ。
今回は乱歩ものではなく明治の探偵講談の復刻のようです。どんな話でしょうか、楽しみです(^^)


「ヒドラ氷穴」(『ウロボロスの波動』所収) 投稿者:管理人 投稿日: 9月20日(金)21時00分54秒

地球のテロリストによる、宇宙側(AADD)の元首暗殺ミッションを、テロリストと、それを阻止しようとするガーディアンの両方の視点から描いた作品。
この話もなかなか面白かった。
火星赤道から天に伸びる軌道エレベーターは、22000キロ上空で(移動させられた)ダイモスに達する。いわばダイモスは火星が振り回す長いヒモの先端に付いた錘である。このダイモスは宇宙港になっていて、火星への来訪者は、ここから軌道エレベーターで火星へ上陸する。

この軌道エレベーター(を昇降するコンパートメント)をテロリストがハイジャックする。
引力と遠心力で釣り合う軌道エレベーターが、静止衛星軌道を境に天地が逆転する描写は秀逸(「楽園の泉」は未読)。思わずポンと膝をたたく。
犯人はあっさり捕まるが、実はこれは陽動作戦で、本命のテロリストは火星に潜入する。テロリストのターゲットはAADD総裁。彼はもうすぐダイモスに到着する。

テロリストが向かうのは軌道エレベーター建設時に利用され、今は打ち捨てられたマスドライバー(一種のカタパルト)。これを利用して、昔はこれに鉱石を乗せて打ち出した容器(パケット)を、からのまま射出する。パケットはいったんダイモス軌道より高い遠地点に達し、そこから落下する。その落下軌道上にダイモスがくるタイミングで射出すればいいのだ。ランチ・ウィンドウが開き、バケットは打ち出されるが・・・

――このようにストーリーのベースは謀略小説です。ワクワクします。山田正紀が書きそうな話です。当然山田正紀よりハードSFなんですが、描写が山田正紀ほどうまくないのが残念なところ。
結果的に表題作「ウロボロスの波動」よりも小説として散漫の印象を拭えません。
考えるに、テロリストの側からの描写は描写に過不足がなく、引き締まっているのだが、ガーディアンの視点からの描写がいまいち。
へたくそな漫才みたいな会話がだらだらと続くのと、この小説自体の本筋とはほとんど関係のないAADDの説明が挿入されているためであろうと愚考されます。

また細かいところでいろいろ気になる。たとえば、ガーディアンのリーダーは神田紫蘭という名前の女性。なんか講釈師みたいな名前やな、と違和感を感じたのですが、これが講釈師であった(汗)。それはいいとしよう。ところがこの人は他のメンバーから「師匠」と呼ばれている。だが、落語家は師匠だけど、講釈師は「先生」なのです。先日見た落語の「不動坊」でも「講釈師の先生」と呼ばれていました。これは完全なミス。
そうそう、それから本編では、神田紫蘭が講釈師であることは、筋と何の関係もない。一個の小説の自立性という観点から言えば、AADDの説明も主要人物が講釈師である設定も夾雑物であるといえるのではないでしょうか。
こういうところをぱぱぱっと削ったら、もっと迫真的な話になったのに。やや残念。
編集済


おお、鬼のチェックが(^^;ゝ 投稿者:管理人 投稿日: 9月19日(木)21時13分59秒

臼田さん

>斜め屋敷
たしかにこれほどいびつな館は他に類例がありませんなあ、、、
ご指摘ありがとうございます。下の文も訂正しておきました(読誌に転用する際忘れないように)。
しかしそれにしても、まったく失念してましたです。というのも、これを読んだ当時は、まだ<本格>の楽しさがわかっていなくて、実はあまり感心しなかったのでした。
「こんなん現実にあり得へん。不自然や!!」
などと思っていたようです(汗)。
けだし本格探偵小説は、メルヘンですのにねえ。


すみません、もう一度。 投稿者:臼田惣介 投稿日: 9月18日(水)23時24分35秒

適当っておかしいですね。
適切かぴったりか、まぁそんな風なことです。


この場合は・・・・・・ 投稿者:臼田惣介 投稿日: 9月18日(水)23時21分29秒

この場合の例に挙げるなら、「時計館」、「霧越邸」より
「斜め屋敷の犯罪」が適当だと思いますが。


「ウロボロスの波動」 投稿者:管理人 投稿日: 9月18日(水)20時39分48秒

林譲治『ウロボロスの波動』集中の表題作を読みました。
これは面白い!
ミニブラックホール軌道上に設置された巨大環状構造体ウロボロス(と、それに併設された宇宙ステーション、アムピスバイナ)を舞台に、AIの認識の構造が、人間のそれとは全く異質であることから引き起こされた、一連の事件を扱っています。

唐突ですが、本編は「館もの」であります。
館ものミステリーの最大の魅力はなにか? 「斜め屋敷の犯罪」に明らかなように、それは、謎めいた殺人を成立させるためだけに作者が知恵を絞って構築したいびつな、不可解きわまる建造物そのもの――ではないのでしょうか? 

同じ意味で、本編の巨大環状構造物ウロボロス(と、それに併設された宇宙ステーション、アムピスバイナ)は、AIによって引き起こされる一連の事件を成立させるために、作者が知恵を絞り、計算に計算を重ねて構築した、壮大にしていびつな建造物に他なりません。この<館>は実に魅力的です。

かかる館を舞台に展開されるストーリーは、ミステリーかと思いきや、(ある意味そうともいえるのですが)実はホラーの構造を持っているように私には思われます。
ホラーとは、私見では、超自然的な力が作中の人間に及ぼす説明不能な(理解を絶する)脅威を描写するものです。
本編のシヴァという名を持つAIは、当然ながら人間が作ったものですが、その認識の構造、世界把握の仕方は、人間のそれのように、具体的物理的な実体としてではなく、すべて記号化、抽象化されたものとして認識される。そういう思考を、人間は、具体的には理解することができない、と本編は述べています。つまり、本編のAI・シヴァは、人間にとって、事実上<超自然的な力>と同様「不可知」といえるのです。

本編は、巨大な館(ウロボロス)を舞台に、超自然的な力(AI)が、館に閉じこめられた人間たちを恐怖のどん底に突き落とします。この辺は実に映像的で、私は本編を映画化したら、とても怖いSFホラー映画になるような気がします。
しかし、最後に人間は、超自然に打ち勝ちます。その勝利は、本編がやはり結局のところ、SF小説であることによって成就するのです。
迫真のスペクタクルSFとして、とても面白い中編でした。
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「紅と蒼の恐怖」 投稿者:管理人 投稿日: 9月17日(火)21時06分59秒

土田さん
私も同じ意見です。「砲丸のひと」と「UM」がベスト(^^)
いや白状しますと、「砲丸のひと」を読んでいるとき、土田さんの顔がちらちら浮かんで仕方なかったです(^^;ゝ

岡本俊弥さんが、小川一水『群青神殿』(ソノラマ文庫)をレビューされています。
このひと、最近珍しいジュブナイルの雰囲気を持ったストレートなSFの書き手なんですよね。私の注目している作家の一人です。
うーむ、よみたいなあ、、、
でもなあ、また本がたまってきていて……それも新刊書店で買った本がたまってきているんですよね(−ー。
新刊で買った本が、未読のうちに古書店に並んでいるのを発見したときの悔しさといったら(^^;ゝ
というわけで、少しセーブしなければ、と思いはじめたところなんで、非常に悩むところではあります、、、。


珍しく 投稿者:土田裕之 投稿日: 9月16日(月)22時53分18秒

大熊さんもお買いになった「紅と蒼の恐怖」を読了。
森青花の「砲丸の人」は収集癖のある人には楽しめると思うぼくにはすごく面白い
短編でした。
試しに家人に読ませたら「こんな気持ちの悪い話をおもしろがるあんたはおかしい」
と一蹴。とほほ。
あとは黒武洋の「UM」が発想的には昔ながらのテーマの変奏曲ではありますが
子どもを語り手にすることによって抹香臭さをなくすことに成功して佳作と思いました。


高野史緒「私のように美しい……」(井上雅彦編『キネマ・キネマ』所収) 投稿者:管理人 投稿日: 9月16日(月)16時04分03秒

ある有名な映画を本歌取りした、非常に謎めいた話で、おそらくいろんな解釈を許容するのだと思います。
以下は、私の解釈――

これは影の物語だ。
今まで自分の実人生から引き写した主人公に、自分の実人生を引き写した物語を演じさせてきた映画監督(あからさまには書かれていないが人物の特定は誰にもはっきりとできる)が、あるとき自分自身が映画の配役の一人を演ずる……
映画は完成し、役者たちは配役から自分自身に戻る。かの映画監督も配役から自分自身に戻る。
しかし、そのとき、なにかがするりと彼から抜けて、影の世界に入ってしまったのだ。
映画は完成した。監督は自分自身に帰った。しかし、彼の中から抜け出したもの――それは演技をしていることすら「ほとんど」忘れて、映画の設定を「本気で生きて」いる彼の「影」(ドッペルゲンガー)――は、いまだに、映画の物語世界に囚えられている。
その「影の世界」では、映画の完成とは無関係に、その(映画の)物語の「その後」が引き続いているのだ。影の彼の前には何もない。彼の通った後に世界ができていく。しかし、彼がある一線を越えようとしたとき、もはや帰ってこれない一線を越えようとしたとき、引き返せとのサインが届く。
だが、彼は……

私は上のように解釈したわけですが、繰り返しますがこの話は幾通りにも解釈できるでしょう。実はこの一線が何を意味するものなのか、まだ私にはよく判っていないのですが、ともあれ一種デモーニッシュな力動を短い枚数に凝集した、まるで一幕ものの芝居を観ているような心地にさせられる、美しい小説でした。
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プロ生活20周年 投稿者:管理人 投稿日: 9月16日(月)12時35分44秒

昨日はSF作家草上仁さんのプロ20周年記念パーティにお招きをあずかり、行ってまいりました。
主催のファンクラブまぶだちの会の会長さんと一度面識があったので招んで頂けたようです。
草上さんご本人のお人がら故か、沢山の方がお祝いにいらっしゃっておりました。メインゲストの堀晃さん他SF界ミステリ界の著名な方も多く、某SF雑誌の編集長さんにもはじめてお会いしました。あまりにお若いのでビックリ。
非常に和気藹々とした和やかな会で、気が付けば3次会まで居座ってしまいました(^^;。
3次会では喜多哲士さんのお話しを拝聴するを得ましたが(途中まで喜多さんとは知らなかった)、南山鳥27氏の名前が飛び出してきて、ビックリするやら懐かしいやら(^^;。他にも懐かしい名前の消息を伺え、楽しかったです。
運営されたまぶだちの会会長さん、ほか会員の皆さん、どうもお疲れさまでした。
草上さん、いろいろお話しさせていただきありがとうございました。これからも二足の草鞋でご健筆をお祈りいたします。


50円引きサービス 投稿者:管理人 投稿日: 9月12日(木)22時31分00秒

近所の書店はジュンク堂方式。つまりすわり読みオッケーなんです。椅子やソファーが据えられているんですが、わたし的には座って読むのは抵抗があります。
この書店、喫茶店が併設されていて、一冊だけなら書店の本を持って入って読んでもいいのです。若い女性や主婦が、雑誌類をとっかえひっかえ持ってきて読んでいます。これも私にはとてもできる所業ではありません。
しかしこの喫茶店、書店の方で本を買ってそのレシートを見せると、50円引きしてくれるのです。このサービスはよく利用しています。最近は、仕事が早く終わった日は必ず寄っています。おかげで新本をよく買うようになりました。そして本によっては喫茶店で半分くらい読んでしまいます。

今日は「キネマ・キネマ」を購って、喫茶店で高野史緒さんの話だけ読んで帰ろうと思い、寄ったんですが、まだ店頭に置かれていなかった。他にほしい本はなかったんですが、休憩したくて(条件反射ですな)、別にほしくもない「紅と蒼の恐怖」(ノンノベル)ってのを買ってしまった。うーむ、、、考えたら50円引きしてもらっても、総支出は増えてるんですよね。
なんか書店/喫茶店の思惑にもろはまっているかも。


サイバーパンク(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 9月 9日(月)20時14分19秒

土田さん

>「ニューロマンサー」を読みました。
おおっ!!

>恥ずかしいことにサイバーパンクを読んだのは多分初めてかもしれません
私は、もっと恥ずかしいことに、サイバーパンクをまだ1冊も読んだことがありません、、、

>で、読みにくいことこの上ない
やっぱり(汗)

>どうにも難しいですねえ
うむむ……じゃ私も、もうちょっと棚上げしておくことにします。
そのかわり、たまたまついさっき、「スター・タイド・ライジング」上巻だけですがブックオフで見つけたので(汚かったけどなかなか見つけられなかったのでしぶしぶ確保)、こっちから着手しようと思います。


サイバーパンク 投稿者:土田裕之 投稿日: 9月 9日(月)00時59分58秒

「ニューロマンサー」を読みました。
恥ずかしいことにサイバーパンクを読んだのは多分初めてかもしれません。
で、読みにくいことこの上ない。
面白かったか?と聞かれても「わからない」というのが正直なところ。
感性が古いといわれてしまえばそれまでですが
ガジェットの横溢するイメージ先行の記述は「格好いい」という感想はわかるものの
自分には今のところ、わざわざわかりにくく書いているようにすら感じてしまいました。
とはいえ、追随者を輩出しひとつのムーブメントを作った里程標的な作品ですので
ゆっくりと再読してみたいと思わせるものではあります。
どうにも難しいですねえ。


日本書紀の謎を解く――述作者は誰か 投稿者:管理人 投稿日: 9月 8日(日)12時22分25秒

森博達『日本書紀の謎を解く』(中公新書)読了。
わが国最初の正史「日本書紀」が、どのようにして成立したのか、を文献学の方法論に基づいて分析し、その述作者(複数)を、文献史学の立場から具体的に推定したもの。
手がかりはすべて本文中にある。分析の方法論さえ判っていれば、(人物の特定は無理にしても)誰だって解答を出せるだろう。分析の仕方が判っていたら、だが(^^;

日本書紀30巻は漢文でかかれている。巻によって大ざっぱに二つの系統に分けられることが判ってきた。著者は、その記述に用いられた音韻や語法の分析によって、かかる2系統が、正確な中国音で表記されており漢文も正格であるα群と、中国語ネイティブスピーカーなら絶対間違わないような破格が頻出するβ群に対応することを明らかにし、α群が渡来中国人一世の手になるものであるに対し、β群が日本人が書き継いだものであると推定する。そして中国人の筆になる部分にも書き癖から2系統を析出する。かつ各巻の成立順序さえ明らかにしてしまう。
この辺の論証の手続きは、まさに本格パズラー顔負けの快刀乱麻ぶり。私は、「おおっ」、「おおーっ」と感嘆の声を上げっぱなしであった(実際に発声したわけではない。もちろん!)。

かくして最終的結論として、筆者は、持統朝にα群である巻14から巻21の途中まで(死によって途絶と推定)を中国人続守言が担当し、巻24から巻27までは中国人薩弘格が担当。
β群は遅れて(α群が古い元嘉暦の暦日が用いられているに対してβ群は新しい儀鳳暦が用いられていることに着目)文武朝に山田史御方(やまだのふびとみかた)が担当。
巻30は書紀編纂現在進行中の持統紀であることから、崩御12年後の元明朝に紀朝臣清人が撰述、同時に三宅臣藤麻呂が全体を通して潤色加筆するとともに、続守言が書き残した巻21の残り部分を述作した、とする。

「私はこの本を書くために生まれてきた」と、著者は「あとがき」に書いています。すごい自信ですが、たしかにそう言い放っても読者は納得せざるを得ない力作です。
古田武彦「邪馬台国はなかった」も本格パズラーの大傑作ですが(犯人の意外性ではこっちが上(^^;)、しかしこの本の弱点は読者が論証を検討できないこと。本書は手がかりはすべて(煩雑なほど)書き上げられており、読者は自分で検証できます。本格パズラーとしては本書の方が優れているでしょう(>ミステリーじゃないって(^^;)。

それから本書を読むのに「日本書紀」を読んでいる必要はありません。書紀自体を対象的に外側から分析しており、内部に立ち入ったものではないからです。
ガチガチの本格ミステリー愛好家におすすめ!
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「ソラリスの陽のもとに」(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 9月 7日(土)21時09分53秒

臼田惣介さん

『ソラリスの陽のもとに』は、ファーストコンタクトテーマとして、SFの極限に達してしまった作品ですね。
この小説自体が、いわば一種の「事象の地平線」で、これより先は人間である限り到達不可能なわけです。人間の認識作用を越えてしまうものだからです。
したがってファーストコンタクトテーマのSFは、40年前に既に終着点が明らかになっているといえます。
レム以後のSF作家は、ことファーストコンタクトテーマに関しては、よく行ってソラリス止まり、大概はその手前で遊ぶしかないのですね。
その点、『さまよえる海』は、終着点との距離を測りつつ、エンタテインメントに徹して終着点と戯れているのです。

>昨今のSFファンの評価はどうなんでしょうか。
評価などと言う以前に、読んでない、あるいは存在すら知らない人が大半では。
したがって草上仁の、この洒脱なコードチェンジの妙技も、まずわからないでしょうね。

タルコフスキーの「惑星ソラリス」は、原作の映画化と言うより、もはや別の作品ですよね。これはこれで私は気に入ってます。少なくとも、ハリウッドでは絶対に作れない映画ですよね。
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「ソラリスの陽のもとに」 投稿者:臼田惣介 投稿日: 9月 7日(土)01時14分24秒

管理人 殿

「ソラリス・・・」と言えば、かつては読書ファンの必読書でしたが、昨今のSFファンの
評価はどうなんでしょうか。
タルコフスキーの映画「惑星ソラリス」を見るために読んだのは今は昔のことでした。
個人的には、今風ではないように思いますが。草上仁の本は面白そうですね。では。


しまった!! 投稿者:管理人 投稿日: 9月 6日(金)19時41分56秒

森博達『日本書紀の謎を解く』(中公新書)
あと2、30ページで読み終わるのに、仕事場へ忘れてきてしまった(泣)。
これは面白いです! 「邪馬台国はなかった」よりも本格ミステリー度は高いかも。快刀乱麻の名推理(^^)


さまよえる海(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 9月 5日(木)22時47分30秒

表紙のイラストなんて全然気にしてないから、気が付かなかったですが、そうそうこのシーンこそ、作者が書きたかったことでしょう。
つまり――ソラリスの海に「お手」をさせること(汗)
うーむ、お茶目(^^;

グーグル検索して、「さまよえる海」の感想を見て回りましたが、残念ながらほとんどが「新喜劇」的部分にばかり気を取られて、この本の「SF」的部分の濃さを見落としているんですよね。
唯一ここでは、まっとうに反応してくれていますが、どっちかというとSFのSに傾いた評価。「ソラリスの倒立」という企て(根源的衝動)への言及はありませんね。やはりレーベルがレーベルだけに一般のSFファンの目には触れにくいのでしょうか?(そういえば、私もつい先日まで出ているのに気づいてませんでした)
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さまよえる海(下) 投稿者:管理人 投稿日: 9月 4日(水)21時30分12秒

草上仁『さまよえる海(下)スター・ハンドラー2(ソノラマ文庫)読了。
『さまよえる海(上)』から待たされること5か月、ようやく出た下巻は、期待以上の、とてつもない傑作でした!
本書において作者は、SF史上最大のアポリアである<ソラリス>問題に、一つの解答を提出した。すなわち「ソラリス」の主人公ケルビンは、本書のスチャラカ登場人物がそうしたように、「ソラリスのなま水」を飲むべきだったのだ(汗)。

異質の知性を有する生きている海ソラリスを理解するためには、まずソラリスの海そのものを自分の体内に摂り込み、血肉と化してこそ可能だったのではないか、と作者は考えたのではないだろうか?何せ人体の70%(だっけ)は水分なのですから。
かかる観点からの今一つのソラリス物語こそ、本篇なのだ。こうして本書においては、スチャラカチームによって太平洋(たいへいひろし)ちゃんと名付けられた生きている海は、人間と交流し得るに至るのである。最後のマルレーネとヒロシちゃんの交流の場面は、涙(とそして脱力)なしには読めないであろう(汗)。

本書は、かくのごとく海と人間の相互理解の物語なのだが、同時に他の様々のフェイズにおいても「分け隔ての解消=理解の成就」がテーマとなっている。植民者と砂漠の民、マルレーネとサン・ケンドリック、長老とヴィッキー、ランドールと管制官。大団円はこの種の小説の常套とはいえ、いろんな分け隔てが、物語が終わる頃には、一線が解消される。それら様々なフェイズでの「分け隔ての解消=理解の成就」が最後の10数ページに集中し、私はこの10数ページを喫茶店で読んでいたのだが、感動の涙を隠すのに苦労したのだった。

またジュヴナイル小説としての機能にも、作者はおさおさ怠りなく、科学的な説明に手抜きがない。これが素晴らしい。海釣り、じゃなかった海を釣り上げようとする(汗)スチャラカ登場人物の、鶏口を割くに牛刀をもってするがごとき壮大にして馬鹿馬鹿しくも、かといって科学的に間違っているわけではない(汗)方法など、中学高校生に科学への興味をきっと与えるだろう。

掛け値なしの傑作SFである。
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ホーム・ワールド 投稿者:管理人 投稿日: 9月 3日(火)19時32分55秒

柳生さん
お疲れさまでした。
いや、70年前後のフォークを歌う機会に飢えているんですよ。
さすがに会社の宴会で、「くそくらえ節」を歌うわけにはいきませんもの(^^;。

ハリー・ハリスン『ホーム・ワールド』酒井昭伸訳(創元文庫)読了。
<星の世界へ>三部作の第1巻。太平の夢をむさぼっていた若きエリートが、現実社会の醜悪な構造に気づき、それを打破せんと立ち上がって、陰謀と詐術の渦巻く世界に飛びこんでいく(扉惹句)、近未来の革命的物語。
ハリスンらしく小気味のよいテンポで話は進む。最近の作家なら400頁を費やすだろう話を250頁で書いている。端折れるところはどんどん端折っている。わたし的にはこれくらいが丁度よい。
ただ、なぜイスラエルが革命の前衛なのか、よく判らない。まあ、最後でイスラエル政府が支配階層と結託していることが判判明するので、続きを読めってことでしょうか(^^;

「月刊センター」の眉村卓ショートショート、更新されています。→コップの水


お疲れ様でした 投稿者:柳生です 投稿日: 9月 2日(月)12時09分56秒

土曜日の夏の名残の宴会ではお世話になりました。
ただの酒飲みの集まりではないようにとのことでしたが、ただの酒飲みの集まりでもいいなぁと、思いつつ、更新がとまったままの「風の翼」を反省してます。
みんな、歌が好きなんですね、すごく意外でした。


風の翼オフ会 投稿者:管理人 投稿日: 9月 1日(日)09時00分11秒

Yさん
外科というと、また同じところでしょうか。
つづくときはいろいろつづくものですね。お気を落とさず、治療に専心して下さいね。
お早い復帰をお祈りいたします。

さて、昨日は風の翼オフ会。
出席者は、主催の柳生真加さん西秋生さん所与志夫さん橋詰久子さん中相作さん臼田惣介さん野村恒彦さんと私。メンバーがメンバーだけに、いつもにましてにぎやかな宴会でした。
2次会は、この会ではめずらしくカラオケへ。おとなしくおしゃべりするのかと思いきや、いきなり「生活の柄」。こうなってしまっては誰も止めることはできません。合唱というより絶叫の阿鼻叫喚地獄(^^;ゝ。大体昭和40年代のフォーク、歌謡曲なんですが、西さんがめちゃ古い歌を入れるので、対抗して橋詰さんが軍歌を歌い出すわで、もう収拾がつきません。
気力体力絶え果てた私は、先に帰らせてもらいましたが(それでも3時間歌った)、そのあとも延々と続いたことでありましょう。

その野村さんの畸人境HPに、新たに掲示板が開設されました。
編集済


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