【掲示板】


ヘリコニア談話室ログ(2004年1月)


卓通信 投稿者:管理人 投稿日: 1月30日(金)21時16分19秒

卓通信に、第4号−1「アイデア拾いのこと」を掲載しました。
打ち込んでいて気がつきましたが、このエッセイ、半分は奥さんに向けて発信されていますね。
編集済


『不思議のひと触れ』(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 1月29日(木)21時04分58秒

(つづき)
「閉所愛好症」(ギャラクシー誌56年8月号)
前作品同様、これぞスタージョンというべき作品。
兄よりずっと要領が良く賢く、スポーツマンで男前の弟。兄の欲したものは全て横取りしてしまう弟。
だが、それを別の見地から見れば・・・

「雷と薔薇」(アスタウンディング誌47年11月号)
「タンディの物語」、「閉所愛好症」にもいえることだが、今日的見地から振り返れば、ありふれたプロットなのだ。それなのに、私の前に置かれたこれらの作品のなんという芳醇さ。そしてなんと不思議な輝きを放っていることか。「キャビアの味」、「英語と情事に耽っている」と評される所以だが、小説はストーリーとイコールではないということを、改めて認識させてくれます。

「孤独の円盤」(ギャラクシー誌53年2月号)
人間は孤独である、それに耐えられなくなったとき、人は瓶に手紙を入れて海へ投ずる……
孤独な女のもとに現れた円盤は連鎖して、足に障害のある顔も不細工な男を女の方へ引き寄せる。
同じことをいうが、単純なボーイ・ミーツ・ガールの物語が、スタージョンの手に掛かると異様な発光を始めるのです。冒頭の、月光に照らされた海の描写は、とりわけ凄絶!

次は『ヨットクラブ』に取りかかる予定。


『不思議のひと触れ』 投稿者:管理人 投稿日: 1月29日(木)21時03分56秒

シオドア・スタージョン『不思議のひと触れ』(河出書房奇想コレクション、03)

「高額保険」(ミルウォーキー・ジャーナル紙、38年7月16日)
あっと驚く2転3転のラストが効いているのだが、これは難しい。3度読み返しました。

1)作中主人公のアルが語るとおりなのか?

しかしながら、
>「面会時間はそう長くはとれないよ」(8p)
>「おまえがこんなところに閉じ込められたと聞いて驚いたよ」(8p)
に着目するならば、1)は採れない。

2)アルは刑務所に入っているのか?>訪ねてきたフィルをかついだ?
3)アルは精神病院に入っているのか?>全ては妄想?

結末は読者任せというのが真相のような気がするのですが、とはいえ案内係の「紺の制服」が肝なのかも。紺の制服という記号が意味するものはアメリカ人にとって自明だとしたら?
いずれにしても第1作とは思えない達者な筆力です。

「もうひとりのシーリア」(ギャラクシー誌57年3月号)
スタージョン版「屋根裏の散歩者」(^^;
家裁の厄介になるほど「好奇心が強い」スリム・ウォルシュが、安アパートの階下に引っ越してきたシーリア・サ−トンの部屋で見つけたものは、小さく折り畳まれた人間の皮膚? 彼は彼の部屋からシーリアの部屋が覗けるよう細工する。そうして彼が目撃したのは・・・

「影よ、影よ、影の国」(イマジネーション誌51年2月号)
ボビーの部屋の壁に〈何か〉がいる。
父さんが、用事で家を留守にした日、継母のグウェン母さんのボビー虐めがエスカレートする。おもちゃもなにもかも取り上げられ部屋に閉じ込められたボビーは、壁に手をかざし、影絵を作って遊ぶ。と影絵のなかにくだんの〈何か〉がするりと入り込む。影絵が生き返る。声を上げて喜ぶボビー。その声を聞き咎めたグウェン母さんがドアを開けると・・・

「裏庭の神様」(アンノウン誌39年10月号)
ケネスは妻に「嘘ばかりつく」と思われている。まあ実際そうだ。
ある日、庭で奇妙な像のような石を掘り出す。それは意識を持っており、掘り出してくれたお礼に、ケネスが口に出して言うことは全て真実になるようにしてくれたのだが・・・
この「魔法?」が引き起こす一連のどたばたが、めったやたらとおかしい(^^;

以上の3作品は、とりわけ昨日書いたようにエンターテインメント的で、私はただちにテレビの「ミステリーゾーン」の世界を思い出しました。

「不思議のひと触れ」(F&SF誌58年1月号)
あらすじを紹介するまでもない超有名作。
私は読んでいて、月の出前の、くらい夜の海をイメージしたのは当然だが、同時に、暗幕を背景にして岩を模した台が中央に置かれた「舞台」が目に浮かびました。つまり演劇の舞台が。照明のあてられた岩の上に男女が座り、一幕劇を演じている、そんな光景が浮かんできたのです。
荒々しい現実の海原と、舞台の上の(想像的な)海が、二重写しに見えてくる、そんな間接的な静けさに包まれた絶品でした。

「ぶわん・ぱっ!」(第1作品集"Without Socery"48年刊)
ジャズ小説の傑作!! 
これを読むだけでも本集を買う価値アリ。ラストの船上のジャムセッションのシーンは涙なしには読めません。いかなる解説も必要ない大感動作!

「タンディの物語」(ギャラクシー誌61年4月号)
幼稚園児タンディと、彼女の兄、妹、母、父の日常的な世界と地球を周回する人工衛星の世界が、まったく齟齬をきたさず見事に繋げられる。一見平凡なように見えて、その実スタージョンの小説構築力の凄さに感嘆させられます。
(つづく)
編集済


アメリカ、アメリカ! 投稿者:管理人 投稿日: 1月28日(水)21時28分37秒

『不思議のひと触れ』読み中。やっぱスタージョンいいねえ(>しみじみ)。
先に出た『海を失った男』が一種〈文学的〉だとしたら、本集はスタージョンのエンターテインメントな面が前に出ているかも。
残りあと2篇、今日中に読めるかな。

ところで大森さんの解説を読むと、スタージョンは恒常的に「売れない作家」だったようですね。こんなすばらしい作家がなぜ?と私などは信じられない思いがするわけですが、土台アホでマヌケで鈍感な(とりわけベトナム以前の)アメリカ人には、スタージョンの繊細な感性など理解の埒外だったのでしょうな(ーー;。
編集済


「カルト資本主義」 投稿者:管理人 投稿日: 1月26日(月)21時50分5秒

柳生真加さん
お疲れさまでした&サポート感謝です(^^) おかげさまで眉村先生も満足していただけたと思います。ありがとうございました。

>3次会まで4次会まであったなんて、いいな〜
たまにはつき合ってね(^^;

>それにしても、いつも飲んでばかりですね。
子供の頃はこんな大人にだけはなりたくなかったのに、どこで道を踏み外してしまったのでしょうか(ーー;

>写真、できてますよ。お楽しみに!
あんまりお楽しみにではないが、まあとにかく、よろしくお願いします(^^;ゞ

斎藤貴男『カルト資本主義』(文春文庫、00)、読了。元版97年、文庫化に際し加筆訂正。

第1章 ソニーと超能力 →あのソニーに「エスパー研究室」があった!!
第2章 「永久機関」に群がる人々 →中学生でも知っているエネルギ保存則をこの国の大企業は信じていない!?
第3章 京セラ「稲盛和夫」という呪術師 →主催する盛和塾、それは塾というより新興宗教の教団のようだった!
第4章 科学技術庁のオカルト研究 →鳩山由紀夫らが参加した「気」の研究会。
第5章 「万能」微生物EMと世界救世教 →沖縄の国大教授が開発した微生物資材は地球を救う万能薬か?
第6章 オカルトビジネスのドン「船井幸夫」 →日本型経営を支えた労務管理がオカルトと繋がるわけ。
第7章 ヤマギシ会――日本企業のユートピア →カルト集団と批判を浴びたコミューン運動に日本の大企業が向ける熱い視線!
第8章 米国政府が売り込むアムウェイ商法 →国民生活センターがカルトと警告を発したアムウェイ商法を手厚く擁護する米政府!
終章 カルト資本主義の時代

8章までは事例編、終章は総括編です。
先進国では社会が閉塞状況に陥ると、終末思想やオカルティズムが流行しがち
だが
会社主義社会である我が国ではその流行の顕れ方も日本的な特殊性を帯びるのではないか
という見通しのもとに取材、執筆されたのが本書。
その結果見えてきたのは、オカルト思考とエコロジー思考の親和性です。これらは、バブル崩壊後支配的となってきた現代社会の2潮流であるといえます。生きとし生けるものは全て繋がっている、あらゆる生物と地球とは一体なのだ、といった思潮、このような一見好ましいことのように見えるエコロジー主義やポジティブ・シンキングが、実は全体の調和の重視=個人の軽視、情緒的・感覚的(論理的・合理的でない)、優生学的傾向、民族主義的である、といった(オカルトと同じ)要素で構成されていたのです。

これらの傾向は、しかしながら一面管理社会の強化に寄与するものであり、だからこそ大企業(の経営者)が注目するのだというのです。すなわち生産性向上の方便として、すでに崩れてしまった日本的経営システム(終身雇用、年功賃金、企業別労組)に変わるシステムとして。

他方、一般大衆の側において、この傾向に反発するような動きはあるかというと、全くそうではなく、逆に轡を並べて邁進している。考えない方が楽だからです。アリのように組織の構成部分として生きるということの方へどんどん引き寄せられている。この傾向に著者は強く警告を発しています。

その意味で、本書は現代日本版「自由からの逃走」ということができるでしょう。
しかも日本人においてはこのような態度こそ「伝統的」といえるわけで、いっそう事態は深刻かも知れません。
今や日本は、「私」をたやすく管理したい側、「私」を放棄したい管理される側が手を携えて「カルト資本主義」の道を邁進しているようです。著者はこう結んでいます。
願わくは、思考停止がこれ以上進まない社会であってほしい(459p)、と――


お世話になりました。 投稿者:柳生真加  投稿日: 1月25日(日)22時41分22秒

きのうは、眉村先生を囲む会に参加させていただいてありがとうございます!
3次会まで4次会まであったなんて、いいな〜。
それにしても、いつも飲んでばかりですね。お互い。また、ご一緒させてください。
写真、できてますよ。お楽しみに! 


お疲れさまでした 投稿者:管理人 投稿日: 1月25日(日)16時19分35秒

昨日の眉村先生を囲む会、なごやかで和気藹々とした会になりました。ご出席のみなさま、どうもお疲れさまでした。
眉村先生も終始ご機嫌なご様子で、3次会までつきあって下さいました。お忙しいなかおいで下さって本当にありがたいことでした。近況やこれからの予定その他あれやこれやを一杯伺うことができました。近ぢか出版される予定の本について、拙サイトでもそのうちお知らせできるだろうと思います。
まずは盛会となり、私もほっとしております(^^)。眉村先生、ほか出席者のみなさんに改めてお礼申し上げる次第です。ありがとうございました。
とはいえ土曜の夕方という設定が拙くて、数名の方に出席していただくことができなかったのは、返す返すも残念です。最後の最後まで調整に努めて下さったみなさまにはまことに申し訳ありませんでした。次回は日曜日で考えますね。
というわけで、また企画しますので、その節もどうぞよろしくお願い申しあげます。

おちまさ子さん
どうもお疲れさまでした(^^) 

>初めての参加で緊張していたんですが、気さくに話して下さり、うれしかったです
こちらこそ、とても楽しかったです。

>またこういう機会があれば、参加したいと思います
ぜひぜひ、よろしくお願いします。
児童文学は門外漢ですが、よろしければご著書読ませて下さいね。

アレクすてさん
お疲れさまでした(^^) いつもおつきあい下さり、本当に感謝しております。昨日は最後の4次会までつきあわせてしまいました(^^;ゞ

>皆さん、いい人で、私がでしゃばりさえしなければ、よかったなあ、と思っております
いえいえ、全くそんなことはありませんでしたよ。これからもその調子でお願いします。

>眉村先生は、本当に小説に出てくる司政官のようなかたで
>素晴らしい人だ、と思いました
いやまったくそうですね。まさに人格者という表現がふさわしい方だと、私も思っています。

藤野恵美さん
お疲れさまでした(^^)

>お食事会ではお世話になりました!
こちらこそ、ありがとうございました。

>久しぶりに眉村先生にもお会いでき、とても楽しい時間が過ごせました
楽しかったですね!

>また誘ってくださいね〜☆
また開きますので、次回もぜひ!
4月に出版されるご著書、楽しみにしています(^^)→まだネットでは公開されてないようなので、受賞の詳細は書きませんが、解禁になったらご連絡下さいね。ささやかながら拙ページでも宣伝させていただきますね!!
編集済


楽しかったです〜☆ 投稿者:藤野恵美 投稿日: 1月25日(日)09時29分45秒

お食事会ではお世話になりました!
久しぶりに眉村先生にもお会いでき、とても楽しい時間が過ごせましたv
みなさま、ありがとうごさいましたー!
また誘ってくださいね〜☆


ただいま、帰宅しました。 投稿者:アレクすて 投稿日: 1月25日(日)00時23分5秒

どうも、ありがとうございました。
皆さん、いい人で、私がでしゃばりさえしなければ、よかったなあ、と思っております。
もうしわけございませんでした。
眉村先生は、本当に小説に出てくる司政官のようなかたで
素晴らしい人だ、と思いました。では。


本日はありがとうございました 投稿者:おちまさ子 投稿日: 1月24日(土)21時34分45秒

大熊さん、今日はおかげ様でとても楽しかったです。
初めての参加で緊張していたんですが、気さくに話して下さり、うれしかったです。
またこういう機会があれば、参加したいと思います。
本当にありがとうございました。


囲む会(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 1月23日(金)21時35分51秒

ふと気がついたのですが、今回初めて参加される方は、集合場所でちゃんと行き会えるかどうか、気がかりに感じていらっしゃるかも知れませんね。
集合場所のスペースはごく狭いので、まず心配無用なのですが、目印に先生の本を持っておくことにします。
ということで、明日3時に!



眉村卓先生を囲む会 投稿者:管理人 投稿日: 1月22日(木)23時11分28秒

締め切りました。
集合場所等のメールを送らせていただきました。届かない方がありましたらご連絡下さい。
それでは当日楽しみにしております(^^)


眉村さんの会中間報告 投稿者:管理人 投稿日: 1月19日(月)19時21分6秒

ななこさん
どうもお疲れさまでした。在所が田舎なもので、いつも途中で消えてしまいます、申し訳ないです。

>最近は頻繁に顔を出しています。今後とも宜しくお願いします。
いえいえ、ぜひとも常連になって下さい。若者組を代表して(>オイ)申し上げておきます(^^;
そういえば、ななこさんのそっくりさんがいると巷で噂の女子十二楽房のテレビ、みるのをすっかり忘れていました。ミスったあ、、、

大江さん
ネット上でも購入できるようです。→電子書店パピレス
紙の本より400円安いのですけど……

>ベストセラーには、どこかに大衆の心を惹きつけるものがあるはずです
わたし的には、司馬遼太郎なんかそうですね。この方は最後まで作品のレベルを維持されましたね。

閑話休題、眉村さんを囲む会ですが、出席の通知をいただいている方に、返信を差し上げずほったらかしにしているようで、申し訳ありません。会場選定で躓いています(座敷・個室にこだわらなければ去年と同じ店があります。最終的にそこに落ち付きそう(^^;ゞ)。
土曜の3時という時間帯は、どこも営業していませんねえ、そういえば去年も同じ反省をしたんでした。我ながら学習できてませんなあ。
とりあえず集合場所を記入したメールを今日明日じゅうに配信させていただきます。

それからまだ締め切ったわけではないので、さらなる参加者をお待ちしております。
いちおう水曜日で締め切らせていただきますが、現状で未定の方も(遅刻の方も)その旨メール下さればなんとかなりますので。


オン・デマンド(横文字には弱いです) 投稿者:大江十二階 投稿日: 1月19日(月)00時37分10秒

管理人様

仰有る通りだと思います。
>ベストセラーは毒にも薬にもならない本のこと
しかし、それは少し言い過ぎるような気もします。ベストセラーには、どこかに大衆の心を惹きつけるものがあるはずです。(とは言っても、ベストセラーなんて滅多に読みませんが)(^^;

面白そうですので、 中西秀彦『本は変わる!印刷情報文化論』を読んでみます。


畸人郷 投稿者:ななこ 投稿日: 1月18日(日)23時06分41秒

お帰りの際、挨拶もせずすみませんでした。風のように去って行かれました。最近は頻繁に顔を出しています。今後とも宜しくお願いします。


『スター・ダックス』 投稿者:管理人 投稿日: 1月18日(日)21時44分35秒

草上仁『スター・ダックス』(ソノラマノベルズ、03)

タイトルは「星界のごきげんな奴ら」といった意味でしょうか(>自信なし)。
まさにそのタイトルに偽りなし、本書は5名の騙しの専門チームが活躍する宇宙版スパイ大作戦(^^)

背景世界は「スター・ハンドラー」と同じ宇宙(か、あるいはその平行宇宙)のようです。ミネア軍とか、共通する名前が出てきます。
犯罪・防犯立国を標榜するヴィトゲンシュタイン王国は、その優秀な防犯システムを輸出するために、同時に犯罪も輸出している。主人公らのチームは、ある星から依頼で、一人の実業家を「合法的に」無一文にしてしまうミッションを組む。
この犯罪・防犯立国の論理からして変なんだが、理屈はとおっています。

スターハンドラーも、斜め読みを許さないほどアイデアが濃縮されていましたが、本書も同じことがいえます。本書の場合はそれが社会や金融の知識であるわけですが、サラリーマンと作家の二足の草鞋を20年以上続けている著者ならではの、金融や経済などの社会システムの「今」を生き抜いているからこそ書ける物語ではないでしょうか。
宇宙を舞台にした荒唐無稽なコン・ゲームの物語を読み進むうちに、いつしかこれは「現実」の話なのではないか、と幻惑させられてしまいました。

一番の読みどころの「電信」を引っかけに使った金融詐欺の宇宙版は、実にヤヤこしく複雑でどきどきするほど面白かった(もっとも社会経験がない若い読者にはいささか分かりづらいかもしれません)。
ラストのスパイ大作戦よろしくかっこよく撤退する場面まで、まさに息つぐ暇も与えないおもしろさです。日常の憂さをつかの間忘れさせてくれる「ごきげんな」SFでした。


経済としての紙媒体 投稿者:管理人 投稿日: 1月18日(日)16時12分30秒

大江さん
昨日はお疲れ様でした。

>紙媒体
まったく仰せのとおりだと思います。電子書籍が主流になっても紙媒体の本が姿を消してしまうことはないでしょう。

問題は、現状において、そのような「愛」のあふれた本がどんどん追い詰められていっていることなんだと思います。
そのようなちいさな売上しか見込めない本を(リーズナブルな単価で)出版できる環境がどんどん少なくなってきていることなんです。
どの業界でも、単品量販主義では立ち行かなくなってきている中、ひとり出版界のみが旧来のベストセラー志向を堅持しております。
ベストセラーとは何か。それはとりもなおさず毒にも薬にもならない本のことです。たとえば私や大江さんが好む類の小説がベストセラーになったことがかつてあったでしょうか(^^; そうではなく、常識から逸脱しない、水のように薄められた内容の作品のみがベストセラーになるのです(もちろん大江さんが好むのが毒で、私が好むのが薬です。為念)(^^;

これまでは、しかしそのようなベストセラーによって我々が好むような本も保証されていました。ところがそのベストセラーが出版界を支えるという構図が、今日壊れかけているようです。
ベストセラーでは支えきれなくなってきているのです。
にもかかわらず、出版界の単品量販志向は一向に改まっていません。それは本というものを生産する過程への革新意欲がないからです。現状の生産工程は、下の中西さんの本に明らかなとおり、ロットこそが神なのです。

#そういう現実が、2次的にベストセラー作家を(編集者が)甘えさせ、さらに作品の質の低下(延いては読者の読力の低下)をきたしている面があるのではないでしょうか。

オン・デマンド出版はまさに生産工程の革新であるばかりか、単品量販主義という前世紀の思考からの脱却でもあるわけです。他の業種では早ければ20年前、遅くとも10年前にはそのような方向へ動き出しています。再販制度がネックになったのは明らかです(これは逆のように聞こえるかもしれませんが、保護は安住しかもたらしません)。

オン・デマンド出版のコンセプトは、いわば<脱・ベストセラー>であり、多品種少量生産の形態といえます。誰でも容易に本が作れるようになるのです。
あとはこれを最終ユーザーへどのようにとどけるかという、流通の問題です。それはおそらくインターネットを介在させて始めて可能となるのでしょう。

オン・デマンドはインターネット時代ならではの新しい出版形態と申せましょう。これからは大出版社の存在意義も変わってしまうかもしれません。企画や編集業務は大出版社の業務から外れて行ってしまうのではないでしょうか。

現状の売れない本のジリ貧状況が、一気に覆る可能性を、オン・デマンド出版は秘めているように思われます。

「スター・ダックス」読了。
編集済


紙媒体 投稿者:大江十二階 投稿日: 1月18日(日)04時14分0秒

畸人郷例会では失礼致しました。大熊さんがお帰りになられたのに、気が付きませんでした。挨拶もせずにすみません。

なかなか紙媒体の本の息はしぶといです。紙の質感、匂い、また本のデザインは重要な要素ですし、なかには本文の活字の形、配列、そのものが内容に左右するというものまであります。ページのなかに小さな本があったり、ページのなかに折り畳んであるものを開いたり、ページからページが飛び出したりするようなものは、もはや二次元では表現できなくなります。(例えば乱歩の「貼雑年譜」)そんなものがあるから100パーセント紙媒体を無くすのは無理なのですね。


「本は変わる!」 投稿者:管理人 投稿日: 1月14日(水)22時10分35秒

Yさん
>ついに角川文庫の薬師丸表紙でない
>「ねらわれた学園」を入手しました
おめでとうございます(^^) せっかくですから、サイトで書影を公開されてはどうですか。

ところで青い鳥文庫の『なぞの転校生』は2月17日発売のようですね(イラストは緒方剛志)。


中西秀彦『本は変わる!印刷情報文化論(東京創元社、03)、読了。
オン・デマンド出版について知りたくて読んでみました。著者は印刷会社の若旦那(にしてSFファン)。前半がオン・デマンド出版誕生の経緯と現状。後半は紙媒体の本に取って代わるかも知れないオン・ライン、インターネットの必然性と可能性。
 すでに産業としての「本」は終わっている(192p)
と認識する著者が、印刷会社の経営者としては死活に関わる現状からオン・デマンドとインターネット・シフトへの展望を分析しています。
まあこの問題に詳しい方は知りませんが、少なくとも私にはとても面白かった。

管見では、ごく少数のベストセラー本で延命している出版業界のありかたは、もともとおかしいわけで、オン・デマンド出版こそ健全な存在形態へ還帰に繋がるものではないかと思われます。

「情報汚染」や「紙は沈黙せず」では、端末で小説等の文字情報を読む場面が出て来ましたが、現状では越えなければならない問題山積のようですね。とはいえオン・デマンド出版の可能性はダウンロード読書の進展次第では短命かも。


読めていない本たち 投稿者: 投稿日: 1月14日(水)21時03分22秒

年末に立ち寄ったブックオフで、ついに角川文庫の薬師丸表紙でない
「ねらわれた学園」を入手しました。全部で4種類あるらしいですね。
くじでも引くような気分でのんびり集めてみようと思います。

>河本さん
ありがとうございます。手近に本はあるのでいつでも読めるのですが
そう思うとなかなか読めません。数学を扱った小説自体少ないので
気になっていました。わからなかったらお聞きするかもしれません。

>導きの星
まだ4を読んでいません。終わりだと思うともったいないような。
司政官と似たテーマを違うアプローチから、という感じだと思います。
買ったけど読んでいない本が増え続けています。


きよしこ 投稿者:管理人 投稿日: 1月13日(火)20時38分20秒

河本さん
>今岡潔の評伝読んでいます
え〜評伝が出たの? ウソでしょう……でも字が違うよ河本さん、清だよ。
と思ったら……、岡潔でしたか(^^;ゞ

>『導きの星』
森下先生が誉めていらっしゃいますね。「司政官」に似ている話らしい。そういえばYさんも誉めておられましたっけ。
たぶんあそこのブックオフにあったな(^^;

『不思議のひと触れ』にしようか、どっちにしようか迷った末、『スター・ダックス』に着手しました。


数式 投稿者:河本 投稿日: 1月13日(火)18時02分33秒

 遅くなりましたが、2004年に因んだ式、縁起物なので書き込ませて下さい。 (^^)  

    2004^6 = 3959307^3 + 1393389^3 + 1494^3
        = 3848682^3 + 1980119^3 + 27889^3

 大熊さん
 今岡潔の評伝読んでいます。
 ポール・エルデシュなんて岡潔に比べれば普通の人です。

 Yさん
 >「博士の愛した数式」
 日記に感想書いてあります。
    http://boat.zero.ad.jp/my_site/dialy/dialy.cgi?owner=zbi74583
 この本を読んで、あれこれ思ったことを書いただけなので、参考にならないかも知れません。
 もし読まれた場合、数学のことがたくさん出てきますが、分からないこと気軽に「すうろん掲示板」で尋ねて下さい。
 幸い、ぼくの守備範囲の数論に関する問題ばかりなので、詳しくお答えできます。
    
 *うっかり投稿ボタンをクリックしました。
  編集がたぶんサーバのせいで出来ないので、あらたに投稿します。
  なおり次第前の分削除します。
    


数式 投稿者:河本 投稿日: 1月13日(火)17時34分58秒

  2004^6 = 3959307^3 + 1393389^3 + 1494^3
      = 3848682^3 + 1980119^3 + 27889^3

Yさん
 >
 日記に感想書いてあります。
 この本を読んで あれこれ思ったことを書いただけなので、参考にならないかも知れません。
 もし読まれた場合、数学のことがたくさん出てきますが、分からないこと気軽に「すうろん掲示板」で尋ねて下さい。
 幸い、ぼくの守備範囲の数論に関する問題ばかりなので、詳しくお答えできます。


「蒼白の城XXX」、「慟哭の城XXX」 投稿者:管理人 投稿日: 1月12日(月)21時29分43秒

田中啓文『蒼白の城XXX』(スーパーファンタジー文庫、98)、『慟哭の城XXX』(スーパーファンタジー文庫、99)の2部作読了。

Aさんと喋っていて『忘却の船に流れは光』の話になりました。Aさんはこの作品について、一種のビルドゥングスロマンだとおっしゃった。私はこの本の主人公はそのような存在ではなく、むしろ狂言回しではないかと言ったのでした。
ではこれを読んでみなさいと貸してくれたのが、この2部作。

本書の主人公の名はブルー。奇しくも「忘却の……」の主人公と同じです。小説の構造もよく似かよっており、一見、社会に出るかでないかという若者がさまざまな艱難辛苦を乗り越えて成長していくお話、すなわちビルドゥングスロマンとして読めなくもない。

ですが私は、やはり本書もそのような成長物語としては読めなかった。
なぜなら、主人公は全然成長していないからです。上巻の冒頭で、ブルーは親友のセダカにこう言われます。
 どうしてって……説明しなきゃならんのかい|そのあたりまえのことがおまえさんにはわかってないんだよ
下巻のラスト近くでは、海賊シルバーがこう言います。
 やれやれ、こいつだけはいつまでたっても成長しなかったな

実際、シルバーに対して憎んでいたかと思うと、次の場面では全幅の信頼を寄せたり、ユミという恋人に対して盲信に近い愛情を抱いている筈なのに、別の場面ではマリアという美人スナイパーやシステム人格のジュリアに対して、けろっと愛情を感じたりしている。つねに他者の言動に振り回され、あっちへ行ったりこっちへ来たりしている。
読んでいてその「主体性」のなさに、なんだこいつは、とあきれることたびたびでした(それは「忘却」のブルーにも感じたことでした)。

「忘却……」のブルーも本書のブルーも、ラストであっさり殺されてしまうストーリー展開からして、私は作者が成長物語として本書を書いたとはとても思えないのです。
大体田中啓文がそんな「まっすぐな」話を書くでしょうか。
本書のブルーは呟きます。
 どうして……ぼくは……いつも馬鹿なことばっかりやってしまうんだろ。どうして……ぼくは……学ばないんだろ……(下巻278p)
いろんな経験を積んでいくのに、全然成長しない主人公、そのような性格を付与された彼は、結局のところゲームの「駒」に過ぎず、最終的には「捨て駒」として盤面からはじき出されてしまうのです。
作者は、ブルーをかかる「学ばない」人間として設定しているようです。おそらく作者は、本書で、いわば「反ビルドゥングスロマン」をやりたかったのではないだろうか。

そのように読むと、本書はいかにも田中啓文らしい作品であることが理解されます。
実に意地の悪い小説でとても面白かった、私は堪能いたしました(^^;
というわけで、私の解釈は変わらないのでした>Aさん
編集済


「フレッジ」 投稿者:管理人 投稿日: 1月11日(日)20時35分22秒

ハヤカワコンドルさん
>ファンレター先どうもありがとうございました
眉村先生は大阪芸大の教授ですので、ここへ送られるのがもっとも早く、しかも確実に眉村先生に届くと思います。

>「1分間だけ」
私も角川文庫版しか持っておりませんねえ。秋元文庫版は見たこともないかも。
最近、古本屋でも秋元文庫自体あまり見かけないですね。どなたかお持ちの方はいらっしゃいますでしょうか。

さて、「フレッジ」を観ました。
ジャック・ニコルソンも老けましたねえ。
これはなかなかむずかしい映画でした。
主人公のジャック・ニコルソンは定年退職の日に少女殺人事件の捜査に参加する。警官最後の事件だが、被害者の母親に必ず犯人を捕まえてと約束させられる。
この約束に縛られたように、ニコルソンは退職祝いのメキシコ旅行をキャンセルしてまで捜査を継続する。
実はこの約束はニコルソンにとっても渡りに船だった(本人は意識してない)。退職という精神的危機から逃れられるものだったからだ。
ニコルソンの執拗な捜査は真犯人の存在を浮かび上がらせる。捜査の過程で知り合った少女をおとりに使う。
この少女と少女の母親を、ニコルソンは深く愛しているのだが、その少女を囮に使おうとするあたりから(約束を果たすというドグマと、掛け買いのない愛する者を護ろうとする気持ちのジレンマから)、精神に変調を来し出す。
犯人はなかなかやってこず、ニコルソンの要請で駆けつけた元同僚は帰ってしまう。同僚は少女の母親に告げる。母親は急いで現場にやってきて、信頼していたのに、となじり、少女を連れて去る。
たったひとりのこされたニコルソンは、それでも犯人は来るとぶつぶつ呟いている。すでにぼけておかしくなっているのだ。
じつは犯人は現場にやってくる途中に交通事故にあって死んでいたのです。……

というまことに皮肉というか身も蓋もないというか、残酷な話なのだ。
こういう複雑なむずかしい役をジャック・ニコルソンがよく演じています。さすが。
複雑な心理ドラマとは対照的に、ショーン・ペン監督の映像は、実にきれいでよいです。
編集済


ハヤカワコンドル2・5 投稿者:ハヤカワコンドル 投稿日: 1月11日(日)16時38分24秒

1 それと、ファンレター先どうもありがとうございました。
  また何かあったら、よろしくお願いします。

2 名前はハヤカワですが、秋元や角川好きです。
  でも、これからも変わらずハヤカワコンドルをよろしくお願いします(笑)
3 秋元文庫でも「一分間だけ」がでてるみたいですけど持ってる方いらっしゃいます?


Re:コンドル2 投稿者:管理人 投稿日: 1月11日(日)16時34分19秒

ハヤカワコンドルさん
>会主席は出来ません。(自分は中一でして・・)
おお、中一で眉村さんを読んでいらっしゃるのですか。なかなか優秀ですねえ(^^)。どんどん眉村さんを読んで、エライ人になって下さいね。
そういう管理人は、なぜか全くエラくなれなかったのですが……(コホン)

えーと、お話かわって、
>眉村先生のエッセイも、一見の価値十分です
エッセイも面白いですよね。
>眉村先生の人物像が伺えますね。
スルドイ。エッセイの文章ってもろ眉村先生の口調そのものなんですよね。ちょっとかすれ声で、少し早口で、大阪弁のイントネーションで想像して下さい。それが眉村先生です(^^;ゞ

ハヤカワコンドルさんに対抗して、創元ハイエナってのを考えました(^^;
創元は草原に掛けているんですけど、ダメですかそうですか。


コンドル2 投稿者:ハヤカワコンドル 投稿日: 1月11日(日)16時12分11秒

管理人さん、会主席は出来ません。(自分は中一でして・・)
出席される方、楽しんできてくださいね。
ところで、眉村先生のエッセイも、一見の価値十分です。
眉村先生の人物像が伺えますね。


「アジアン怪綺」 投稿者:管理人 投稿日: 1月11日(日)15時52分15秒

井上雅彦監修『アジアン怪綺』(光文社文庫、03)読了。

×篠田真由美「双つ蝶」上海大世界という舞台はいいのだが、ミステリ仕掛けのストーリーがテレビの2時間ドラマ並のレベルのつまらない因縁譚。

×中内かなみ「沈蔵」李朝両班の具体的な生活は興味深いが、結局主人公が儒教まみれの生活を追認してしまうのでがっかり。何も始まらないから何も終わらない。批評性がない。

△林巧「ココヤシ」なぜ日本人の双子がマレーシアの神樹と繋がりがあるのか。その辺を書いてくれないと納得できない。

△南條竹則「布袋戯」飄々とした筆致は読んでいて面白い。

△町井登志夫「ギーワン」主人公の日本人女性の身勝手さが鼻につく。

○朝松健「*[豕+生](ずい)」いつもながら文章が無理をしていて読んでいるとつらい。一色義貫治下の小浜の描写がとてもよい、異形の描写も通俗ホラーのように外在的でなく「意味」を了解できる。

○早見裕司「取り憑かれて」この作品も異形の描写が外在的でないのがよい。

○立原透耶「夢禍」朝松作品同様、文章に変なところが散見されていやになる。ストーリーがどこまでオリジナルなのか判らないが、実に面白い。とりわけラストのオチがよい。

△江坂遊「アヴァターラ」ショートショート。

×五代ゆう「うす明かりの道」なぜ(日本人の)女がインドの神様に同一化し、日本人の個人である主人公に絡んでいくのか。せっかくのインド的エキゾチシズムが矮小化、卑小化されてしまった。

×安土萌「銀の関節」これが「西洋文明の独善」(編者)に対して批評性を有するものだろうか。客観的には肉体的な欠損を商売道具にされた幼女の狭い判断能力を小説の視点に持ってきてもリアリティは読者に伝わらない。

△藤水名子「常羊の山」おおむねよかったが、出だしがおかしい。出だしのシーンが以後の展開から断絶している。「引き」を設定したつもりだろうが失敗している。

△草上仁「トンネル」息苦しくなるような密度でリアリティたっぷりに描写されていて読ませる。

○竹河聖「月光の玉」青州の田舎の怪異譚。うまい。

×奥田哲也「素晴らしきこの世界」小説以前。

△友成純一「爛れ」友成の小説は女性的だと思う。だらだらしていて面白くない。良いアイデアなのに。

○高野史緒「空忘の鉢」既述。本集で唯一のSF。

×浅暮三文「雨」この人の小説も悪い意味で女性的。客観的には阿片で記憶を喪失した男が妙なエビを食べたら一瞬記憶が戻り、自分がなぜここにいるかを思い出して涙する、という話で、だから何なんだと苛立つ。文章も悪達者なだけ。

×速瀬れい「金蓮靴」安土萌と同じ。幻想描写の核に幼稚な批評性しかないので読者に伝わらない。

×石神茉莉「鳥の女」篠田真由美と同じ。2時間ドラマ。

○井上雅彦「翩譚集 あるいは或る都の物語」これはすばらしい。本集のベストワン。舌足らずな批評性など最初から峻拒して怪奇な幻想に耽溺している。意味などない。本集中「怪綺」という言葉が真にふさわしいのは本篇だけではないか。

△田中文雄「ふたりの李香蘭」面白い。問題はオチというか仕掛けを納得させる理屈が全然ないこと。


南湖さん、読売に写真入りで! 投稿者:管理人 投稿日: 1月10日(土)15時11分33秒

昨日1/9(金)読売夕刊の「演芸回り舞台」というコーナーに旭堂南湖さんが(写真入りで)取り上げられていました。記者は演芸評論家の相羽秋夫さん。
まだ高座の姿や声に未熟さがあるが、
これらの課題を達成できた時、南湖は間違いなく大成するであろう
となかなかの誉めようです(^^)
いやあ南湖さん、いよいよ玄人筋にも注目されるようになってきましたか。めでたいめでたい!
40年後は講談界初の人間国宝になっていらっしゃるかも。今のうちにサイン貰っとかなくては(^^;
*問題は40年後に私が生きているかですな。


Re:はじめまして 投稿者:管理人 投稿日: 1月 9日(金)22時08分13秒

ハヤカワコンドルさん
はじめまして。
いいHNですね(^^) ハヤカワの本をばりばりと貪り食っていらっしゃるのでしょうか(^^;

>一番好きな作品は「ねじれた町」です
おお、私も大好きな作品です。

>ファンレターをだしたいのです
ファンレターは下記へお送り下さい。
   ↓
 〒585-0001 大阪府南河内郡河南町東山
 大阪芸術大学文芸学科研究室気付 眉村卓先生

激励の手紙を出して下さいね(^^)

ところで、実は今月末に眉村さんを囲んでささやかな会を開きます(本掲示板のトップをご覧下さい)。
ハヤカワコンドルさんがもし関西圏にお住まいでしたら、よかったら出席されませんか。ナマ眉村先生とお話しできますよ(^^;

>今後ともどうぞよろしく
こちらこそよろしくお願いします。またお立ち寄り下さいね。


はじめまして 投稿者:ハヤカワコンドル 投稿日: 1月 8日(木)23時38分23秒

こんにちわはじめまして。初投稿です
突然ですが、どなたか眉村先生のご住所おしえてください(ファンレターをだしたいのです)お願いします。
*ちなみに一番好きな作品は「ねじれた町」です。
今後ともどうぞよろしく


すみません。レスが抜けました。 投稿者:管理人 投稿日: 1月 8日(木)21時36分15秒

Yさん
>眉村先生を囲む会ですが
>残念ながら参加できません
それは残念です(ーー;。

>また機会がありましたらお会いしたいです
是非是非。よろしくお願いします。

>「博士の愛した数式」
私も気になっている本なんです。実はこの本の記憶が持続しないというのと同じ症例が、先日来話題にしている『妻を帽子とまちがえた男』にも載っているんですよね。


「空忘の鉢」 投稿者:管理人 投稿日: 1月 8日(木)21時17分57秒

土田さん
>車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』を読みました
おお(^^)

>淡々としながらも底辺に漲るような緊張感がある小説で
>終盤はなんだか喉が渇いてきました。
緊張感、すごいですよね。この作品まだ読んでませんが、おっしゃってることよく判ります(^^;

>エンターテイメント的にも読めるような感じなので直木賞を採ったのでしょうか
たしかに車谷の本質にそういう部分はあると思います。でもこの時は芥川賞が花村萬月で、芥川賞と直木賞が逆といわれたときだったんですよね。文春の政策?

弛緩した私小説はつまらないけど、こういう抜き身のようなおっかない私小説はいいですね。

高野史緒「空忘の鉢」(『アジアン怪綺』所収)を読みました。
これは面白いです(^^)。
アンドロポフ時代のカザフ共和国の首都アルマ・アタで大学の助教授をつとめる主人公は、カザフ・中国国境の天山山脈のどこかに存在したといわれるシルクロード国家「黄華」の文字を研究している。実は黄華文字は主人公が発見したのだ。

黄華文字は漢字のような偏や旁が組合わさった文字で、大抵7つ以上の部品でできており、その結果として、驚くべきことに漢文6文字に相当する語句をたったの1文字で表現できるのだ。

これはディレーニイ「バベル17」のアジア版ですね(^^; バベル17が極端な複文構造すなわち文法の特化であるのに対して、黄華文字は漢字のシステムの極限化、文字の特化であるところがユニーク。

ところがこの黄華文字には、さらに特異な、主人公によって「太陽文字」と命名された巨大文字があるのだった。その文字は、黄華語を知らない者にまで影響を与える力が備わっていた……

ときどき、読書中ふと気がつくと、目が文字の上を上滑りしていることがあります。目は文字を読んでいるんですが、その文字が訴える内容が全く頭に入ってこない状態です。

上の太陽文字はその逆と考えたらいいのではないでしょうか。たとえ黄華文字を知らない者であっても、その文字を見るだけで、その意味する内容が伝わってくる、そのような文字なのです。しかもその意味作用は強力で、文字の内容によっては読んだ者の精神を狂わせてしまうこともできる。

そんな特異な文字を文字として認識し得た主人公ですから、常人より感受性が強いわけです。その過敏な感受性は、一面で暗示にかかりやすいということでもあり、この被暗示性がストーリーを推進させる契機となっているわけで、うまい、とうならされます。ストーリーは一種のファルスといえるかも。

最近の衛星写真が信じられないくらい解像能力が高い事実を逆手に取ったオチ(?)もきいており、文系SFとして実に興味深く面白い作品に出来上がっています。

ところでラストの「オステップ・ルート」って、そういう道路があるのかな? それとも・・・(^^;ゞ


車谷長吉読みました。 投稿者:土田裕之 投稿日: 1月 8日(木)00時36分26秒

車谷長吉『赤目四十八瀧心中未遂』を読みました。
淡々としながらも底辺に漲るような緊張感がある小説で
終盤はなんだか喉が渇いてきました。

私小説なのかもしれませんが緊張感があり、
エンターテイメント的にも読めるような感じなので直木賞を採ったのでしょうか。
でも、別な意味でこれが純粋な私小説としたらすごいと思うし、
小説になる人生(の何年間)だと思う。

感想文書けない・・。

http://www.02.246.ne.jp/~pooh


おっと間違い 投稿者: 投稿日: 1月 8日(木)00時32分8秒

↓「博士の愛した数式」でした。


おそまきながら謹賀新年 投稿者: 投稿日: 1月 7日(水)23時44分20秒

今年もよろしくお願いします。
眉村先生を囲む会ですが、ちょっと別の予定が入っていて
残念ながら参加できません。また機会がありましたらお会いしたいです。

数学が出てくる小説というと「博士の愛した数学」(小川洋子)
が気になってます。まだ読んでいないのですが。


「神は沈黙せず」 投稿者:管理人 投稿日: 1月 7日(水)21時11分7秒

山本弘『神は沈黙せず』(角川書店、03)、読了。
これは傑作! 日本SFの王道というべき<神テーマ>の本格SFです。2段組500p、帯によれば1300枚の大作ですが、途中だれるところもなく、ぐいぐい引き込まれました。

タイトルはいうまでもなく遠藤周作「沈黙」を見据えたものでしょう。人は、人がかく在ることの(実存の)不条理に堪えられません。そこで「神」が、そして「来世」が発明されました。「現世」の不条理は「来世」の導入で「合理化」されチャラにされるわけです。このような合理化によってはじめて、人は「現世」の不条理に折り合いを付けたわけです。
だとすれば、「現実」的に「神」の実在を信ずるものは、つねに神の「沈黙」という「矛盾」に逢着しないではいられない。これが遠藤「沈黙」の提示した問題でした(遠藤の「問題解決」にはとりあえず触れません)。このように考える私は、当然ですが神の存在を否定するものです。

本書の作者も、私と同じ立場のようで、上述の意味での神の存在を認めておりません。
それが証拠に、死後、「もし来世があるなら」必ず通信すると約束して死んでいった老超常現象研究家は、結局主人公に冥界通信を送って来ず、老研究家の(知性のない)幽体のみが起動画面のモニターを前にして、たた、たたた、と、むなしくキイボードを叩くばかり。

神は存在しない、来世は思弁だと考える作者が、本書で展開する神は、まさに現実に存在する神です。この「宇宙」が「フェッセンデンの宇宙」であることを、作者の該博な知識が総動員されて「証明」されます。そしてその「証明」に気づいた(?)「神」が起こす「リアクション」・・・
このあたりの展開が実にスリリング!

ところで、神が相手にするのは人間ではなく、「グローバル・ブレイン」であるというのは判るのですが、それが集団力学みたいなものを想定しているように読める。この部分は違和感を感じました。集団心というものは得てして個々の人間よりもレベルが低い(理であるより勢である)と思うので、そうかなあ、と。作中にあるように「こんな歌がヒットするわけがない」歌をヒットさせる「グローバル・ブレイン」はとても神が関心を示す存在とは思えないのですが。

そういう意味で、ラストは唐突に感じた。「あれ、これで終わり?」
もう一段の展開(転回)がほしかったように思いました。

ともあれ、本書に私はユーベルシュタインを感じないではいられませんでした。ユーベルシュタインはきっとこんな小説が書きたかったんです。「記憶汚染」にも感じたのですが、21世紀になって、相次いで、ユーベルシュタインがもくろみ、遂に(客観的には)達成できなかった(文系でも理系でもない)技術系の未来社会SFが花開いたのは、日本SF界のバランスという面においてもうれしいことです。
編集済


「アジアン怪綺」 投稿者:管理人 投稿日: 1月 6日(火)21時45分2秒

>「神は沈黙せず」
あと残り80pになりました。で、いったん本を置きました。一挙に読んでしまうのは勿体ない(^^;

で、bk1から届いた『アジアン怪綺』をぱらぱらとめくっていましたら……井上雅彦が中島敦について述べていまして、
スキュティア(スキタイ=韃靼)の憑き物を描いた「狐憑」
と書いているのです。
「スキタイ=韃靼って?」と私は首を傾げました。スキタイは韃靼ではないやろう。
スキタイ人はどっちかというと印欧系といわれており、韃靼(タタール)はもともとはチンギス・ハンのモンゴル部のライバル部族であり、のちには黒海北部のトルコ系部族を指すようになったとはいえ、印欧系であるはずがありません。

とはいっても、中島敦が実際そう書いているのかも知れぬと思い直し、わざわざ「中島敦全集1」(ちくま文庫)を引っぱり出してきました。
結果、「狐憑」本文にそのような記述はありませんでした。
ただし語注に、
スキタイ人。前1000年頃から数世紀にわたり黒海北岸の草原地帯で活躍した遊牧民族。
とあり、この「黒海北岸」をみて勘違いしたのかも。でも時代が全然違いますがな>井上先生

アレクすてさん
今年もよろしくお願いいたします。
お正月は旅行に行ってらっしゃったんでしたね。うらやましい(^^)

>デフレ・スパイラル説
なるほど。たしかに数年前までは、まだ3日では梅田といえどもお店はあまり開いてなかったですね。
テレビがつまらない、というのは、私もこの正月に嫌というほど感じました。ようあんなつまらない番組にスポンサーがつきますねえ。企業はもっと内容をチェックしないと。

河本さんの掲示板は健在ですよ(^^)

臼田さん
新年会、お疲れさまでした。メンバーが替わると、こんなに歌う曲が変わってしまうのかとびっくりしました(^^;

今年も楽しく呑みましょうね(^^) よろしくお願いします。

>レインマン
やはりモデルがあるんですね。それにしても人間の頭脳ってほんとうに不思議ですね。


「レインマン」のこと 投稿者:臼田惣介 投稿日: 1月 6日(火)00時18分34秒

毎度のことながら先日の新年会ではお世話になりました。
今年も懲りずにお付き合いのほどお願い致します。
「レインマン」の話、モデルあるんですよね。調べれば分かるんですが、
とりあえず名前思い出せません。あの驚異的なカレンダー計算の出来る
人です。ちょっと前のTVの特番でも、「サヴァン症候群」の代表的な
例として取り上げられていましたね。100年・200年単位のカレンダーを
コンビューターより早く計算していました。閏年もちゃんと計算している
のですから凄い。計算式はあるそうですが、実際計算していては不可能な
スピードで答えるのです。どうして分かるのか理解不明で、やっばり
見えるというのが近いらしいようでした。


挨拶が遅れてすみません、アレクすてです。 投稿者:アレクすて 投稿日: 1月 6日(火)00時17分40秒

新年、明けましておめでとうございます、アレクすてです。
「風の翼」大宴会、盛況のようで、参加できず残念です。
でも、来年は、きっと暇になると思います。
関係ありませんが、私にとっての都筑道夫さんというのは、「モダンな人」でした。
西洋のカード、ギャンブル、銃器や、メカニックなどの趣味は田舎者に取り垂涎の的でありました。(自分は、SFにも、モダンやハイカラさを求める人間ですので。)
あと、ショーン・コネリーなら、イギリスのコメディ集団モンティ・パイソンの
メンバーであるテリー・ギリアム監督の「バンデッドQ」にでてくるギリシャ王の役が好きでした。
(「王になりたかった男」をくたびれさせた感じでしょうか?
あと、個人的には、「007」のころのコネリーがあまり、好きではないので、
今のコネリーがすきというのもあります。)
もうひとついえば、今年の正月についての印象ですが、
三箇日に街に人が多かったのはデフレ・スパイラルが進行してるからでは?
と思いました。つまり、

街に人が出る

何故?

二日目からほとんどの店が開いているから。
そして、家にいてもつまらないから。

何故?

バブルがつぶれて、大名商売ができないから早く店を開けた。
ちなみに、今大流行の「ヨドバシカメラ」は、元旦から店を開けている。
ついでに言えば、バブル崩壊とデフレで、テレビ番組が、面白くない。
(ビートたけし、タモリの絶頂期のようなバブリーなつくりは、もうできないし、
たけし、タモリ、ダウンタウン松本につながる不条理な脱構築の笑いもできにくくなった。
(ひとつは、そういう笑いを追及しすぎて、熱死状態になったのであろうし、
そういう笑いが受けるほど、今の若者に余裕がない)。)

したがって若者は街に出た。
というところではないか?と思ってます。
新年早々、暗い話題で失礼しました。
また、関係ないですが、素数が見える人といえば、数学SFの大家河本さんを思い出しました。
どうしてらっしゃるでしょう?掲示板を見に行ったのですが、なかったです。
寂しいですね。では!


「レイン・マン」 投稿者:管理人 投稿日: 1月 5日(月)18時18分19秒

bk1のオマケ「オックス博士真夜中に死す」をようやく読みました。軽いショートショートでした(^^;

「レイン・マン」を観る。ダスティン・ホフマンうまいねえ(^^)

昨年度非小説ベスト3に挙げたオリバー・サックス(「レナードの朝」の原作者)の脳神経学エッセイ『妻を帽子とまちがえた男』に、素数が「見える」双子の例が紹介されています。この双子は「知恵遅れ」で計算能力はありません。しかし彼らは「素数」が見えるようなのです。ある日著者が観察していると、ふたりは交互に6桁の数字を言い合って遊んでいます。著者は気がつきます。それが6桁の素数であることに。そこで著者は数表を持ってきて、彼らに加わります。サックスは8桁の素数を言います。

ふたりはふりかえって私のほうを見た。そのあと突然、ふたりはおし黙り、身動きもしなくなった。その顔には緊張とおどろきがあらわれていた。沈黙のうちに長い時間がたった(…)30秒かそれ以上は続いたろう。それから突然、ふたりが同時ににこりと笑った。

そして9桁の素数で応じたのです! 1時間後には20桁の素数をやりとりしていたのです。
この本によれば、素数を見つけるには、「エラトステネスの篩」方式でこつこつやって行くにせよ他のアルゴリズムを用いるにせよ20桁の素数を見つけるのは容易ではないそうです。コンピュータなどもちろんありません。河本さんによると、20桁というのは今のパソコンのほとんど限界だそうです。同じく河本さんによりますと、この双子のような、ある能力だけが人間離れしていて、その他のことは遅れている……は精神医学では「サヴァン」と呼ばれているそうです。

さて、「レイン・マン」です。ダスティン・ホフマン演ずる自閉症の男が、まさにそのサヴァンでありまして、電話帳は一度読むだけで暗記してしまいますし、大数の乗除算を瞬く間に暗算(?)してしまいます。
(?)を付けたのは、どうも暗算をしているのではないからで、どうしてそんなことが出来るのだ、と問われたダスティン・ホフマンは、ひとこと「見える」と答えます。これは上の双子と同じですね。

どういう風になっているのかともかく、彼らには「見える」ようなのです。双子は素数が(他の数とは違う風に)「見える」し、ダスティン・ホフマンは計算値が「見えて」しまうのでしょうか。
その証拠に、「100ドル持っていて50ドルで何かを買いました。今手許に残っているのは?」(実際はこんな問題ではなかったのですが、失念したのでたとえばの例です)と問われると、全然答えられない。

これは思うに社会的ともうしますか、人間関係的な文脈の中に組み込まれた数字だからではないかと想像されます。抽象的な数ならすごい能力を発揮するのですが、具体的な人間(社会)関係のなかの「生きた」数になると、途端に「判らなく」なってしまうのです。自閉症が、まさに「関係」の不具合であることがよくわかるエピソードです。
ともあれこの(瞬間暗記)能力に目を付けた弟役のトム・クルーズが、ダスティン・ホフマンを伴ってラスベガスへ赴き、大金をせしめるシーンは大変愉快(^^;

最初自閉症の兄を金蔓としか考えてなかった弟が、次第に症状を理解し、兄弟愛に芽生えていきます。しかしラストで兄は施設に戻っていくのですが、別れのシーンでもダスティン・ホフマンは症状を忠実に演じます。日本映画ならここで事実を曲げてもお涙頂戴に行くはず。やはりこの辺がすばらしい。
クレジットをみると、PhD なんて単語が散見しますから、かなり専門家が手伝っているのでしょう。ダスティン・ホフマンはずいぶん自閉症患者を観察したのではないでしょうか、迫真の演技でした。

>「神は沈黙せず」
読書継続中。豊田有恒的な一種論文小説の趣き(^^; 内容的に興味深く、共感する部分多し。
なので若干速度を落とし、読解精度を上げる方へ変換しました。
編集済


風の翼新年会 投稿者:管理人 投稿日: 1月 4日(日)11時09分40秒

E・キングさん
明けましておめでとうございます。

>イーガンやテッド・チャン
みんな誉めますね(^^) どちらも出版以前から既にして当然のごとく世評が高かったですね。
ところがそうなるとですね、生来天邪鬼ゆえ私の場合、読みたいという欲求が発動しなくなっちゃうんです(汗)。「マルドゥック・スクランブル」もそう。読めば間違いなく面白いんでしょうけどね。

これに対してイーリイのように、ひっそりと出版された後で、慧眼の読者が(イーリイの場合は大森さんでしたけど)「これ、意外に面白かったよ」などと持ち上げた話が伝わってきますと、これはまた話は別で、「そいつは屹度読まなきゃ!」ということになるのです。人間の心理って不思議ですねえ(^^;ゞ とは言い条、イーリイまだ読んでないのです(汗)

>個性的な文体に拒否反応
そうそう、冲方丁SFMで短篇を読んだことがありますが、文章がちょっと変なところがあり、ものすごく気になりました。長編でも拒否反応を示す読者は多かったのでしょうか?

何はともあれ、今年もよろしくお願いいたしますm(__)m

昨日は「風の翼」吉例新年会でした。毎年3日に開かれるんですが、今回は非常に込んでいました。梅田自体も人出が多かったような。少しは景気が戻ってきたのでしょうか。個人的にはそんな気配は微塵もないのですが。
3次会まで行きましたが、開始が1時だったので、10時過ぎには帰宅。頭痛もあり、年末年始の暴飲暴食で舌が荒れて調子が悪かったのですが、寝るには中途半端な時間で、何となく、そういえば森下先生が誉めておられたなあと、山本弘『神は沈黙せず』を読み始めたら、これが面白くて止まらなくなってしまいました。で結局夜更かし。大作なので、私の速度では今日中に読了はちょっと無理かな。
編集済


謹賀新年 投稿者:E・キング 投稿日: 1月 3日(土)04時38分2秒

あけましておめでとうございます。
正月休みゆえの無聊をもてあます日々に、なんらと騒いで倦怠を発散させようと、こうして深夜にあるにもかかわらず、徹夜書き込みなどを敢行していたりするわが身ですが。
沈滞したSF熱も、一度楽しみを再認識しだすと、とどまることを知らない興味へと誘う声が日増しに強くなるので、その興味の洪水にはや溺死しかけているほどなのですが。
昨年は必読的古典を中心に、なるたけ現代の才能にも触れてみようと挑戦してみたりしておるのですが。暮れから明けてにかけて、間に小林泰三を挟み、本日に至って冲方丁の「マルドゥック・スクランブル」全3巻などをようやく読み終えたところです。
独創性豊かなキャラ造形や個性的な文体に拒否反応を示す向きは少なくない小説かもしれませんが、非常に勢いを感じさせる娯楽性豊かな長編でした。これはこの作品を語る上で、すっかり世評には言及されつくした感はありますが、中盤から後半にかけてのカジノを舞台とした賭博シーンの白刃を切り結ぶかのような緊迫感溢れる心理描写は、作者の独壇場といえて圧巻です。主人公のアイデンティティと密接に結びつくことになる、この要素が作品の肝といって差し支えないほどです。
作者後書きからは、出版を前提とした作品としては、無謀的ですらあった執筆に託した情熱が窺えて、久方ぶりに商売を目的としない生粋の創作衝動が宿す、物語の吸引力を感じさせるに足る、読める痛快な力作だと好意的な評価を下せますね。
管理人様の広範な読書履歴を俯瞰させてもらった直後で、こうして書き込みの手をとりながら、イーガンやテッド・チャンが去年のワン・ツーだな、と世評に迎合する以上のものはない主体性のない自分の批評眼の程度を恥じつつも、刺激されるところ大であります。
本年もどうか、ご指導ご鞭撻の程請いまして、よろしくお付き合い願います。


2003年読了本ベスト 投稿者:管理人 投稿日: 1月 3日(土)01時44分8秒

このうちから小説ベスト10を選びました(但し、去年の森下先生企画のベスト投票に投票した「あしたのロボット」と「ノルンの永い夢」は省きました)。(順不同)

ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』or『廃墟の歌声』
シオドア・スタージョン『海を失った男』
W・S・バロウズ『ワイルド・ボ−イズ[猛者]死者の書』
草上仁「ゲートキーパー(下)」(「スターハンドラー」3部作完結)
平谷美樹『約束の地』
深堀骨『アマチャ・ズルチャ』
林譲治『記憶汚染』
笙野頼子『水晶内制度』
矢作俊彦『ららら科學の子』
車谷長吉『漂流物』
(次)ジョージ・ソウンダース『パストラリア』

非小説はベスト3を選びました。(順不同)

オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』
山形浩生『たかがバロウズ本。』
井田茂『異形の惑星――系外惑星形成理論から』
(次)池田清彦『分類という思想』

こんなところでしょうか(^^;ゞ
編集済


2003年読了本(承前) 投稿者:管理人 投稿日: 1月 3日(土)01時14分41秒

(下より続く)
――非小説――
1月
高森明勅『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書、2002)
遠山美都男『天皇誕生』(中公新書)
遠山美都男『白村江――古代東アジア大戦の謎』(講談社現代新書)
田中彰『小国主義――日本の近代を読みなおす』(岩波新書1999)
坂本勉『トルコ民族主義』(講談社現代新書、1996)
2月
中沢新一『熊から王へ――カイエ・ソバージュU』(講談社選書メチエ、2002)、
吉國恒雄『グレートジンバブウェ――東南アフリカの歴史世界』(講談社現代新書、1999)
中沢新一『人類最古の哲学――カイエ・ソバージュT』(講談社選書メチエ、2002)
東浩紀『動物化するポストモダン――オタクから見た日本社会』(講談社現代新書、2002)
遠山美都男『天皇と日本の起源――「飛鳥の大王」の謎を解く』(講談社現代新書、2003)
中沢新一『愛と経済のロゴス――カイエ・ソバージュV』(講談社選書メチエ、2003)
3月
池田清彦『分類という思想』(新潮選書、1992)
松沢哲郎『進化の隣人 ヒトとチンパンジー』(岩波新書、2002)
4月
大塚英志『キャラクター小説の作り方』(講談社現代新書、2003)
大塚英志『定本 物語消費論』(角川文庫、2001)
5月
大塚英志『物語の体操――みるみる小説が書ける6つのレッスン』(朝日文庫、2003)
6月
井田茂『異形の惑星――系外惑星形成理論から』(NHKブックス、2003)
安田喜憲『長江文明の謎』(プレイブックス・インテリジェンス、2003)、
筒井康隆『小説のゆくえ』(中央公論新社、2003)
7月
関裕二『卑弥呼はふたりいた』(ワニ文庫、2001)
関裕二『天武天皇 隠された正体』(ワニ文庫、2000)
小原秀雄・羽仁進『ペット化する現代人――自己家畜化論から』(NHKブックス、1995)
佐伯啓思『「欲望」と資本主義――終わりなき拡張の論理』(講談社現代新書、1993)
山形浩生『たかがバロウズ本。』(大村書店、2003)
佐藤洋一郎『イネの文明』(PHP新書、2003)
8月
井上荒野『ひどい感じ――父・井上光晴』(講談社、02)、
9月
ひかわ玲子『ひかわ玲子のファンタジー私説』(東京書籍、1999)、
兵藤裕己『〈声〉の国民国家・日本』(NHKブックス、2000)
原田実『ヨシノガリNOW』(梓書院、2003)
井上史雄『日本語は年速一キロで動く』(講談社現代新書、2003)
10月
桂米朝×筒井康隆『対談 笑いの世界』(朝日選書、2003)
北杜夫『どくとるマンボウ医局記』(中央公論社、1993)
12月
武光誠『歴史地図で読み解く三国志』(プレイブックス・インテリジェンス、2003)
小川英雄『ローマ帝国の神々』(中公新書、2003)
オリバー・サックス『妻を帽子とまちがえた男』(晶文社、1992)


2003年読了本 投稿者:管理人 投稿日: 1月 3日(土)01時13分8秒

昨年の読了本をまとめておきます。
昨年は小説52冊、非小説36冊、合計88冊読了しました。
近年では快調な方だったと思います。

――小説――
1月
瀬名秀明『あしたのロボット』(2002)
小森健太朗『ムガール宮の密室』(原書房2002)
平谷美樹『ノルンの永い夢』(ハヤカワJコレクション、2002)
2月
重松清『きよしこ』(新潮社、2002)
ジェラルド・カーシュ『壜の中の手記』(晶文社、2002)
3月
ジョージ・ソウンダース『パストラリア』(角川書店、2002)
中村融編『不死鳥の剣剣と魔法の物語傑作選』(河出文庫、2003)
リイ・ブラケット『リアノンの魔剣』(ハヤカワ文庫、1976)
4月
エイヴラム・メリット『イシュタルの船』(HSFS、1968)
エイヴラム・メリット『蜃気楼の戦士』鏡明訳(ハヤカワ文庫SF、1970)
吉田知子『日本難民』(新潮社、2003)
マレイ・ラインスター『異次元の彼方から』佐藤高子訳(HSFS、1969)
S・S・ヴァン・ダイン『僧正殺人事件』日暮雅通訳(集英社文庫、1999)
エラリー・クイーン『アメリカ銃の謎』井上勇訳(創元文庫、1961)
5月
ニール・R・R・ジョーンズ『二重太陽系死の呼び声』野田昌宏訳(ハヤカワ文庫、1972)
久野四郎『夢判断』(HSFS、1968)
稲生平太郎『アクアリウムの夜』(角川スニーカー文庫、2002)
小林泰三『家に棲むもの』(角川ホラー文庫、2003)
江戸川乱歩「孤島の鬼」創元推理文庫1987(初出1930) 
大塚英志『木島日記』(角川文庫、2003)
6月
江戸川乱歩「蜘蛛男」
草上仁「ゲートキーパー(下)」(ソノラマ文庫、2003)
小川一水『群青神殿』(ソノラマ文庫、2002)
7月
平谷美樹『約束の地』(角川春樹事務所、2003)
ウィリアム・S・バロウズ『トルネイド・アレイ』清水アリカ訳(思潮社、1992)
8月
田中啓文「忘却の船に流れは光」(Jコレクション、2003)
W・S・バロウズ『ワイルド・ボ−イズ[猛者]死者の書』山形浩生訳(ペヨトル工房、1990)
石原藤夫『ブラックホール惑星』(ハヤカワ文庫、1979)
9月
浅暮三文『似非エルサレム記』(集英社、2003)
紺野あきちか『フィニイ128のひみつ』(ハヤカワJコレクション、2003)
石原藤夫『ストラルドブラグ惑星』(ハヤカワ文庫、1975)
井辻朱美『エルガーノの歌』(ハヤカワ文庫、1990)
10月
川田武『戦慄の神像』(角川文庫、1981)
高橋たか子「骨の城」(講談社文庫) 
深堀骨『アマチャ・ズルチャ』(ハヤカワJコレクション、2003)
リンド・ウォード『狂人の太鼓』(国書刊行会、2002)
林譲治『記憶汚染』(ハヤカワ文庫、2003)
11月
笙野頼子『水晶内制度』(新潮社、2003)
笹沢左保『地獄の辰・無残捕物控 首なし地蔵は語らず』(光文社文庫、85,88)
矢作俊彦『リンゴォ・キッドの休日』(ハヤカワ文庫、87)
笹沢左保『地獄の辰・無残捕物控岡っ引きが十手を捨てた』(光文社文庫、1985)
シオドア・スタージョン『海を失った男』若島正=編(晶文社、2003)
テリー・ブルックス『魔法の王国売ります! ランドオーヴァー1』井辻朱美訳(ハヤカワ文庫、1989)
C・L・ムーア『暗黒神のくちづけ』仁賀克雄訳(ハヤカワ文庫、1974)
E・R・バローズ『火星のプリンセス』小西宏訳(創元文庫1965)
矢作俊彦『ららら科學の子』(文藝春秋、2003)
12月
E・R・バローズ『火星の女神イサス』小西宏訳(創元文庫、1965)
E・R・バローズ『火星の大元帥カーター』小西宏訳(創元文庫、1966)
ジェラルド・カーシュ『廃墟の歌声』西崎憲他訳(晶文社、2003)
高井信『ショートショートで日本語を遊ぼう』(ちくま文庫、2003)
車谷長吉『漂流物』(新潮社、1996)
車谷長吉『金輪際』(文藝春秋、1999)
(つづく)


「白痴群」 投稿者:管理人 投稿日: 1月 2日(金)21時48分37秒

柳生真加さん
今年もよろしくお願いします。

>「眉村卓先生を囲む会」
>調整ができたら参加します
こちらの方も、調整できるようでしたらよろしくお願いします。

それでは新年会で(^^)

車谷長吉『白痴群』(新潮社、00)読了。
表題作のみ昭和の作品(昭和50年)、あとはすべて直木賞受賞後の作品です。
表題作は、作者のこれまでの昭和の作品同様、体験が素材になっているとはいえ、私小説を志向したものではなく、小説として面白い。おそらく「赤目四十八滝……」はこのような昭和の作風の延長線上にあるものだろうと推測されます。その意味で直木賞の授賞は、或いは作者の資質に沿うものだったといえるかも知れません。

「愚か者」は掌篇集。自己戯画化が徹底された果てに醸成されるユーモア、ここまでよう書くな、とあきれながらも、私は好きですね。

あとは私小説。文体が、まあある意味円熟してきたといえるのでしょうか、『漂流物』に比べて迫力がなくなっているのが少しもの足りません。
内容的にも、直木賞受賞後、経済的に余裕が出来た最近を描いた「武蔵丸」は、もうまったく「充足」していて、つまらない。平凡きわまる私小説。それ故にか谷崎賞受賞。こんなん書いとったらあきません。

最近作ではあっても、不遇時代に材を取ったものは、怨嗟や諦念や劣等感や虚勢がないまぜになったやるせなさが、まだまだ嵐のように行間に吹きまくっています。作者の執念深さを感じます。とりわけ「一番寒い場所」(平成11年)には、噴出するような内圧が漲っていて凄いの一語。
編集済


新年明けましておめでとうございます。 投稿者:柳生真加 投稿日: 1月 2日(金)16時39分18秒

昨年はお世話になり、ありがとうございます。

「眉村卓先生を囲む会」24日なんですね。ああ、仕事が入ってる〜(泣)。でも、行きたい! 調整ができたら参加します。

今年もよろしくお願いします。


明けましておめでとうございます 投稿者:管理人 投稿日: 1月 2日(金)14時32分37秒

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

土田さん
『M.G.H』は私も面白かったです。ことにもすばらしいのは、ハードSFであることが本格ミステリであることの必要不可欠な要素(契機)となっている点ですね。同じくSFミステリといっても、西澤某氏とは全然別物だと思います。西澤某氏のSFミステリは、結局のところ恣意的なSF的設定の単なるパズラーですものね。
そういえば『海底密室』を読もうと用意したまま忘れていました。これも片づけなければ。
「クチュクチュバーン」も気をつけて探してみます。

真弓さん
>いつの間にやら書評コーナーみたいになってますね
いやもう、最初からこんな調子でお恥ずかしい限りです。そういわれてみれば、本当に社会性皆無ですよね。眉村ファンサイトにあるまじき傾向かも(汗)

>私もやってみようかな
是非是非(^^)

>「青い炎」
この本は未読です。一時話題になりましたね。そういえば最近ホラー系の作家を読んでいませんねえ。

大江さん
タイガースネタ大歓迎ですよ(^^;
こっちで反応しておきますが、うちの読売新聞は、たまに甲子園のタダ券をいただけるので節を屈しておるのです。我ながらあさましい限りであります(^^;

さて、年越しの読書は、車谷長吉『白痴群』でした。その影響かどうか、無性に中島みゆきを聴きたくなって、昔のテープを引っぱり出してきました(^^;
というわけで、年の始めから暗さ爆発しておりますですよ(汗)


賀正 投稿者:大江十二階 投稿日: 1月 2日(金)05時10分0秒

明けましておめでとうございます。旧年中は色々とお世話になりました。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
昨年は阪神タイガースのことばかりを掲示板に書き込んでしまいました。皆さんの書き込みをみて、もっと視野を広げて色々な本を読んでみなくてはと思いました。


あけましておめでとうございます 投稿者:真弓 投稿日: 1月 2日(金)02時15分9秒

寄港の真弓です。
いつの間にやら書評コーナーみたいになってますね。うちの掲示板は閑散としているし、私もやってみようかな。
今年初めて読み終えたのは、貴志祐介「青の炎」でした。昨今の事件の引き合いに出されて少し話題にもなていたようですが、少年犯罪云々がテーマではなかったような気がします。
ロジックで犯行に踏み切った主人公が、現実世界の圧倒的な緻密さに敗北する。そんなお話でした。

http://www.h3.dion.ne.jp/~bungei/


あけましておめでとうございます 投稿者:土田裕之 投稿日: 1月 1日(木)19時47分33秒

今年もよろしくお願いします。

年越しで今読んでいるのは『M.G.H』でした。

年末に読んだ吉村萬壱「クチュクチュバーン」(文藝春秋)は大熊さんにもお勧めできるかも。

今年はもっともっと面白い本に出会えますように!

http://www.02.246.ne.jp/~pooh


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