28日の土曜日は、先般、初の長篇ミステリ『文章探偵』(早川書房、06)を上梓された草上仁さんを囲む会に出席してきました。 名張市の恒例乱歩講演会(今年は綾辻行人さんが講師)のあとに開催されたのですが、私は往路車中にて読了(^^;。 いやこれは傑作でした! よくもまあここまでこねくり回し、作り込んだものだなと驚き呆れた次第。この大数の法則を逆手に取ったアイデアはうならされました。
作家ではないのでよく分かりませんが、ふつうの小説の倍は時間がかかっているんではないでしょうか。 実は本書、「文章探偵」というだけあって、記述された(印刷された)文章そのものに解明の手がかりが隠されているという凝った構成で、私も一字一句たりとも見落とすまじと、目を皿のようにして読んだことでありました(その甲斐あってミスプリも発見しちゃいましたけど)(^^; 草上さんも、最初の構想では「読者への挑戦」を入れるつもりだったとのこと。さもありなん。
ただ会の席で、この高密度の構成と文体は、読者がついてこれないのではないかという意見が出まして、まあそうだろうなとは思ったのですが、逆に「これくらい読みこなしてこそ読書人だろう」という思いも私の場合は強く、実は丁度ある日本人作家のホラー短篇集を読んでいまして、これがもう箸も立たない薄々のスカスカで、「こんな読者を嘗めた小説を出す作家も作家、版元も版元やなあ」と半ば呆れたのですが、結局読者の読書力の衰退が、このようなちんぴら作家をのさばらせ、逆に「文章探偵」のような作品の面白さが伝わりにくくなっているのが現実なんでしょう。ああつまらん現実!
「文章探偵」の中でもベストセラー現象のあらえっさっさ的な部分がかなり辛辣に描かれていますね。「いやルサンチマンです」と笑っておられましたけど(^^; |