「結局は」
誕生日がテーマの本篇は2002年に上梓された短篇集収録作品で書き下ろしのようだ。想像するに1921年生まれのエムシュが80歳の誕生日(2001年)にインスピレーションを得て書かれたものではないか。「石造りの円形図書館」にも同様のモチーフが出てくるが、エムシュ自身はいろいろ活動したいのに、娘や息子たちが「老人扱い」する。「ママ、自分で思うほど若くないのよ」(319p)。それが気に入らない。とはいえ「ボケる」恐怖感もある。「それはノン・コンポーゼ……だかなんだか……の兆候ではなくて、昔からそういうことには注意が向かなかった」(322p)。
そういうこと全てから逃れて(「自己回避の旅」318p)どこかへ行ってしまいたい。と(現実か想像か判らないが)飛び出してはみたものの、やはり「死」の観念が付いてまわり、かつて自殺を試みた山へと足が向いている。かといって生への執着も消えたわけではなく、その想いが天変地異を待ち望む気持ちを生む……。
エムシュ80歳の所感。原題のAfter
Allは文字どおりそのまま理解すべきでしょう。
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