【本日のお言葉】
《「じゃあ、やっぱりおめえさんは、木枯し紋次郎さんで……!」
力蔵が、びっくりするほど大きな声を張り上げた。力蔵の脇を駆け抜けた一太郎が、前へ回り込んで紋次郎をシゲシゲと見やった。その大きな目が、父親の驚きように同調していた。一太郎はもちろん、木枯し紋次郎の名前を知ってはいない。
だが、父親の力蔵が木枯し紋次郎と知って、憧憬と驚愕の感情を剥き出しにした。そこで一太郎も、木枯し紋次郎なる渡世人を見直したわけである。それはあくまで、父親の感情に沿っての価値判断なのだ。》
笹沢佐保「無縁仏に明日をみた」
残雪は「逢引」、「汚水の上の石鹸の泡」を読む。ここまでの4篇は20頁に満たない掌篇なので、いまいちインパクトに欠けます。もちろん内容的には母親が溶けて盥一杯の石鹸水になってしまったり、母親の通夜の席で、弔問客にまじって当の母親が夜食をムシャムシャ食っていたりと、とんでもないシチュエーションのオンパレードなんですが、そのシチュエーションが長さの不足で展開できていない憾みがあります。
残るは表題作のみ。この作品は一転100頁の中篇なので一発大逆転打を期待したいところ。
『日本の右翼と左翼』は、前半の「日本の右翼」を読了。
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