「大江戸神仙伝」>240頁あたり。駘蕩すぎて、ひねもすのたりのたりかなになってきました(^^; 波頭がはじけないんですよね。
原因は長編形式にしたこと。語りたい薀蓄は一杯あるのに、それを乗せるストーリーが少なすぎる。短編連作形式でミステリ仕立てにした方がよかったかも。
とはいえ面白いのは面白い。79年(ほぼ高度成長が終焉した頃)の作品なんですが、非常に予見的でもあります。
「高度成長の20年かそこらで、まるで連鎖反応のように自然環境が荒廃したのを、便利さの代償というのは、一種のまやかしではあるまいか。本当の犯人は、10年使えるものでも、2年か3年で捨てて、新品に買換えさせないと成り立たないように作り上げてしまった社会組織そのものと、それを積極的にせよ消極的にせよ受け入れてきた私達なのだ。ああいう社会は、土地、資源、人口などが、無限に増加しない限り、早晩行き詰るに決まっているのに」(129p)
はたして少子化と団塊世代引退で行き詰っちゃいました。
「あの高度成長期というのは、まさに怒涛のような時代だったことがわかって来る。/その結果についての評価は、もとより私などのなし得る所ではないが、世界史上にかつて類を見なかったし、今後も二度と起こりそうにない、独特の強烈極まる平等革命だったのではないかという気がするのだ。(……)日本は、少なくとも世界でも有数の平等を達成してしまっている国だ」(184p)
田中角栄政権(1972-1974)は実質社会主義政権だったと、先日読んだ『「小さな政府」を問いなおす』にも書いてありましたっけ。今は昔でありますなあ。
小さな政府といえば、江戸幕府は「驚異的な安上がり政府(チープガバーメント)」だったらしい。「都庁と警視庁と裁判所を兼ねたような町奉行所は、南と北が月番制であったが、正式職員は(……)僅か290人で万事取り仕切っていた。/現在の都庁職員22万人から考えると、単純計算で700〜800分の1というところだ。行政範囲は広がっているが、今は、電話も自動車もある。一方、都民(庶民)の人口は、20倍程度に過ぎないのだから、驚くべき増加率ではないか」(194p)。「なぜこう安上がりに市中の治安を守れたかというと、実際の市政は、町(ちょう)役人という市民側の自治体に下請けをさせておいたからである」(195p)
まさに今流行の「民間へのアウトソーシング」ですね(汗)。
|