《サンフランシスコには全米最大(……)世界最大のチャイナタウンがある。その理由は、
トランスアメリカ鉄道の建設のために、膨大な中国人労働者を呼び寄せたからだ。(……)
西部劇にはよく中国人の洗濯屋、葬儀屋、そしてコックが出てくるが、鉄道工事以外の仕
事はそれしかなかった》 (『無人大陸中国』62p)
エリア・カザン監督「波止場」マーロン・ブランド主演(54)を観ました。
ニューヨーク港の港湾労働者組合を牛耳り、甘い汁を吸っているボス。彼に逆らうと沖仲仕たちは仕事にありつけない。その不正を暴こうとするものは消されてしまう。元プロボクサーの主人公テリイ(M・ブランド)の親友で、聴聞会で証言しようとしていたジョーイが殺される。テリイも含め沖仲仕たちは見て見ぬふりをする。その後テリイは、ジョーイの妹で、兄の死の真相を追求しようとしていたイディに、しだいに惹かれていく。その過程で、ボスの賭け勝負のために、ボスの片腕になっていた兄の使嗾でテリイが八百長試合をやり、その結果チャンピオンの夢が破れた事実が明らかになる。イディや正義派の牧師の影響で次第に目覚めてきた主人公は聴聞会で証言を決意するが……
最後の最後まで、港湾労働者たちがボスに縛り付けられているところが、簡単にファンタジーになってしまう日本製の単純なドラマ仕立てとは決定的に違っていて、「今観る」私にはとても新鮮でした。
先日の畸人郷で、日本のドラマは軽薄に脱構築で、それゆえ韓流ドラマを作れないのだという話になったのでしたが、同じ意味で、このようなシリアスな構築劇も作れなくなっているのではないかな、とふと感じました。
60年代以前のアメリカでは、このような地方ボスの王国がいたるところにあったようですね。それがまずハードボイルド小説の舞台になり、とりわけアメリカン・ニューシネマの舞台になりました。本篇はその先駆的な作品だと思います。アメリカン・ニューシネマの頃はすでにそのような悪しき構造が崩れ始めており、それゆえテーマにしやすかった面があると思います。本篇はその点で先駆的であるだけに、前例のないところから組み上げていかなければならなかったはずで、牧師や恋人の影響というところがやや弱いのは致し方ないところでしょうか。
日本でも、同和事業体や府民共済など、ある種の第3セクター的な組織体に同様のボス王国が生まれがちなので、本篇のような映画をとる余地はまだあるはずですが(小説なら警察小説)、制作者サイドに愚直な構築を馬鹿にする風潮があるので無理でしょうね。
読書は『無人大陸 中国』に着手。半分読みました。
ある日忽然と、中国大陸の13億の人間が消滅。一夜にして(インフラは維持したまま)無人地帯と化した中国。ロシア、インド、ベトナム、北朝鮮、台湾等の近隣隣国は虎視眈々と領土的野心を示し始める。そんななか、世界より3000万の華僑や華人が故国を守るため陸続と帰還してくるのであった!!
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