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星新一さんは、直接向かい合った、目の前の相手に対しても、「○○さん」といわず「○○氏」と呼びかけるという知識があったのですが、伝説みたいなものだったのかな。
高井信さんが私の書き込みに反応してくれて、ご蔵書から「ユートピア小説の紹介本」を紹介して下さっています。→ショートショートの……
私はしつこく、一生かかっても読めない本をすでに収集して本棚の肥しにしているのに、さらにまだ収集しようする態度をからかっていますが、本を死蔵させている限りにおいての話です。それは単なる所有欲です。それを存分に活用している高井さんや中村融さんや日下さんのような蔵書家、というより書誌研究家は、当然その限りではありません。
死蔵するくらいならリリースして、今、本当にその本を読みたいと切望している人の手に渡るようになるべきです。で、相談ですが、リリースするにあたっては、まず私にご一報頂けるとありがたいのであります(>おい)(^^;
閑話休題。実は私、購入したまま手付かずだった『ゴースト・オブ・パラダイス』を、読もうと思い手にしたのですが、目次を見て、思わず持った本をばパッタと落とし、小膝も叩かずに考えこんでしまった。というのは他でもなく、自分が有名な「ユートピア小説」(但し非SFの)を、これまで全く読んで来なかった事に気づいたからでした。で、とりあえずといいますか、まずはといいますか、ユートピア小説のめぼしい作品を、先に読んでしまおう、それから『ゴースト・オブ・パラダイス』に着手しても遅くないだろう、『ゴースト・オブ・パラダイス』の性格からして、それが妥当な判断ではないだろうかと、思った次第。
で、上記リンクの村山勇三『ユートピヤ物語』の目次を眺めますと、まさに、私が「読むべきユートピア小説」としてリストアップしたものと、(ウェルズを除き)ほぼ重なっており、まあこの線で間違いないな、と意を強くしたのでした。これらの作品は所持しており、あるいは持っていないのも市販されていて購読可能なのです。
村山本にはないのだけれど、バトラーの『エレホン』もリストアップしていたのですが、これがアマゾンマーケットプレイスでトンデモナイ値付がなされているんですよね。死蔵されている方は即刻リリースしていただきたいものであります! と思っていたら、なんとこれ、ネットで読めるみたい→プロジェクト杉田玄白
まさに捨てる神あれば拾う神ありです(>ちょっと違う?)。
あと「1984年」「すばらしい新世界」「われら」(これらは反ユートピア小説?)も、この機会に読んでしまうつもり。
という次第で、まあ断続的になるでしょうし、『ゴースト・オブ・パラダイス』に手を付けられるのはかなり先の話になりそうです。
『ユートピア』は100頁まで。
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「ユートピア」に着手
投稿者:管理人 投稿日:2012年 9月29日(土)21時09分12秒[註]なお、ウィキペディアの「囲い込み」記事は相当問題があるようです。信用できません。こちらを参照のこと
囲い込みによって農地を奪われた人々は、農業以外の生業の技術を持たない→ある一定の年齢に達していれば、それから改めて新しい職能を習得することも難しい→働くべき仕事が無い→流民化する→食うためにやむなく盗賊等非正業に落ちぶれてゆく→治安が悪化する→それで刑罰が厳罰化する。このゆくたても、日本の現状と構造は同じですね。
本書では、それは方向が逆だとします。厳罰化したって食っていけない社会システムは変わらないのだから、生きてゆくための犯罪はなくならない。エンクロージャーで潤うのはごく一部のジェントリーで(後に資本家として産業革命の担い手となりイギリス資本主義を基礎づける)、そのために大多数の農民が困窮するのは話がおかしい。農地を奪われず農民でありさえしていたら、流民化することもなく、治安も悪化せず、罰則を強化することも必要ないじゃないか、と。
これを語るのは、ラファエルという(ユートピア国に滞在し帰ってきた)旅行家なのですが、まあ、モア自身の意見であることは間違いありません。ラファエルは、国家は平等を保証しなければならない、と考えています。その意味で、貨幣経済と私有財産制を否定します。この辺は、まさに石川達三の『最後の共和国』と同じです。
ただラファエルの言う「平等」国家観に対して、作品中の登場人物であるモア自身は、逆の意見を投げかけます。すなわちそういう世界では(働いた報酬が自分のものとならない世界では)、他人を当てにした怠け者ばかりになってしまうのではないか? この問題も『最後の共和国』では人民の「家畜化」(羊化)という視点から問題ありとしていました。石川の場合、平等主義とその裏面である人民の家畜化は、統一的には考究されなかったのですが(前者肯定、後者否定)、さて、本書の場合はどうなんでしょうか。楽しみであります(^^)
しかし本書、1516年の出版なんですよね。日本で言えば戦国時代、北条早雲が相模を制圧した年。なんたる先見でありましょうか!
ということで、第二部では、いよいよ「ユートピア国」の話となります。