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「昔、火星のあった場所」読了
投稿者:管理人 投稿日:2014年 9月30日(火)21時07分55秒《雨のしょぼしょぼ降る晩に、豆狸(狸の幼生ユニットのことらしい)が徳利をもって酒を買いに来たなどという伝説が残っているくらいだ》(102p)
北野勇作『昔、火星のあった場所』(新潮社、92)読了。
承前。
ああ面白かった。後半100頁を一気。
ラストで、ごちゃっと確率的に融合していた世界は、観測され(?)確定されて元(?)に戻るのですが、基本本篇は確率的にしか存在しない世界の描写であります。
したがっていわゆるストーリーは貫かれず(なぜなら因果律が無効化している)、一般的な読書において読み手を助ける「慣性」が働かないため、一気読みすればよかったのかも分かりませんが、読むのを休憩すると次に再開したとき、あれ、ここはどこ? と戸惑ってしまいがちになるのでした(^^;
たとえば103頁、「なにがなんだか、よくわからないよ」で、一旦休憩し、二日後に続きの「雑誌『遺跡発掘』は、着実に部数を伸ばしていた」を目にして、あれれいつそんな雑誌ができたの?、と十数頁元に戻って読み返してしまいました(^^;
かくのごとく、本篇においては因果的な慣性が無効化されています。何もかも確定していない世界を描写するのですから、これで当然なのです。最初は戸惑いましたが、ある程度全体像がわかってきますと、これがなんとも言えぬ快感になってきました。この一種眩暈に似た感じは、或る意味フリージャズが感じさせてくれるふわっと浮き上がる感じと(わたし的には)大変よく似ており、よい感じでした(^^;。
ラストで、この世界の謎解きがなされ、「ぼく」や「鬼」や「彼女」の「位置」が確定し、(承前での解釈とは違って)客観的な火星や地球は関係ない「系」での出来事であることが明らかになります。たぶん。
かくして「ぼく」は、「門」から脱出し得たんでしょうか。空には火星が元の場所でかがやいていますが……わかりません。
わかりませんが、とても奇妙な世界で、堪能しました。