「スウィングしなけりゃ意味がない」(4)
投稿者:管理人 投稿日:2017年 3月31日(金)22時21分24秒『スウィングしなけりゃ意味がない』130頁まで。
ここまでは締め付けが厳しくなっていく中で、それに反抗して、ナチス何するものぞと気ままに振る舞う不良たち(金持ちの子弟という特権でですが)の一種さわやかな青春小説の趣きがありました。
本章では、一転、これまで背景に退いていた当時の社会の暗い現実が、前面に出てきます。
マックスの祖母は半分ユダヤ人(厳格なルター派)。ですからその妹(マックスの大叔母)も半分ユダヤ人。祖母の子供(マックスの父)は4分の1ユダヤ人。ここまでは分かる。ところが大叔母の子(叔母)は、なぜか100%ユダヤ人なのです。不思議でしょう?
その理屈は本書を読んでもらうとして、その「人為的な区分け」が、マックスの一族に悲劇をもたらす。本章ではその顛末が描かれます。独立した短篇の趣きがあります。
祖母が死んだ翌日、偶然にも叔母の一家がポーランドの
収容所ゲットーへ送られる日にあたっていたのですが、偶然と書きましたけど、そんなにうまいこと偶然が起こるとは思えません。祖母の死はポーランド出発が契機だったのかもしれません。叔母は祖母の死を知らずに出発する。マックスはその出立を隠れて見送る。まるで映画のラストシーンを見ているような、印象的な場面でした。
追記。章題の「奇妙な果実」は、祖母を暗示しているのでしょう。