チャチャヤン日記

 

                                   大熊宏俊

 

 若い頃の日記からチャチャヤング関連記事をピックアップしてみました。当時を思い出すよすがになれば幸いです。

 文章は原則として直していませんが、日記特有の読者を意識しない難解な文は、判読の上(笑)大意に解きほぐしました。

 原文では眉村先生を呼び捨てにしておるのですが、いくら何でもなあと思いましたので、さん付けに改めています。

 それではどうぞご笑覧下さい。

 

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1971.1.16>土

チャチャヤングからベースギターがやっと送られてきた。どうやらウソではなかった。しかしコードがないのでつなぐことができない。

 

<(註)チャチャヤングの年末だったかXマスだったかの懸賞でエレキ・ベースギターが当たったのだ。このエレキベースは、バンドを組んでいるわけではない私には使い勝手が悪かったので、その後知り合いの楽器店でエレキギターと交換してもらったのだった。>

 

 

1971.1.17>日

ベースギターのコードと本を買いに梅田へ出た。阪神<百貨店>でコードを買った。そこで教則本をだいぶ探したがなかったので、旭屋へ行って買った。

 

1971.1.22>木

現在一時三分。眠たい。昨日寝たのが四時頃だった。そのうえあまり眠れなかった。

しかし今日は絶対三時までがんばるぞ!チャチャヤン、今日は眉村卓の日なのダ。

 

1971.1.23>金

朝、またもや寝坊!35分に家を出る。

もういないだろうと思いながら校門までやって来ると、期待に反して安全委員はクモのように執念深く網を張っていた。

またもや遅刻! 近頃の安全委員ときたらあまりに任務に忠実すぎる!

 

<(註)35分とは8時35分のことだろう。中学校の始業時間は8時30分であった(汗)。チャチャヤングを聞いて寝過ごしたのでした。>

 

1971.1.28>木

チャチャヤングへ手紙書く。

 

眉村さん今晩は。

僕は本格的なハードSF系統の作品が大好きです。

クラークやブリッシュ、ハインラインなどの作品はほとんど読んでしまいました。日本唯一のハードSF作家の石原藤夫さんの作品(SFだけ)も全部読みました。

そこでお願いがあります。

どうか石原さんに電話をかけて話をして下さい。

そのとき、このことは絶対たずねて下さい。

一、長篇を出す予定は?

二、もし出すならいつ頃?

眉村さん、絶対に電話して下さい。お願いします。

リクエスト曲、ブラザーズ・フォア グリーン・フィールズ

 

<(註)ブラザーズ・フォア! 笑っちゃいますな。この頃眉村さんがSF作家の方に電話をかけてインタビューするコーナーがあったのだ。光瀬龍、豊田有恒は覚えている。石原さんが電話口に出られたかどうか記憶にない。筒井さんはどうだったっけ。>

 

1971.2.13>土

テスト直前というのに、またショートショートを書いた。題名「戦争を知らない子供たち」

 

1971.2.15>月

桃山学院の入試おわる。

さんざんの出来。

 

<(註)桃山学院高校は併願で受けた私立高校。それにしても高校入試日の二日前にショートショートを書いていたのか! 完全に逃避行動ですな。>

 

1971.2.18>木

チャチャヤングにショートショート「戦争を知らない子供たち」送る。

ヤンタンとチャチャヤングきく。

チャチャヤン、眉村卓。

ヤンタン、池口和男・檀上英子。

 

<(註)チャチャヤンのショートショートコーナーに初めて投稿したのである。池口、壇上はヤンタン水木担当。当時檀上英子がお気に入りでした(^^;ゞ。>

 

1971.2.19>金

<桃山学院の>合格通知来る。ホッ

 

1971.2.20>土

ショートショート「邪馬台国」書き上げる。あまりよい出来ではない。

チャチャヤンに送るつもりだったが、「戦争を・・・」の結果を見てからにする。

 

1971.2.24>水

今日は公立高校の調整会で、授業は昼まで。家に帰ってベントーを食べた。それからベンキョーもせず本ばかり読んだ。北杜夫「霊媒のいる町」

 

1971.2.25>木

あのショートショート(戦争を知らない子供たち)Bの中だったぞ!

初めてでこの水準なら有望だ。今度は絶対Aをとるぞ!

 

<(註)ショートショートコーナーで眉村さんから「Bの中」という評価をいただいたのだ。すごい鼻息である(笑)。>

 

1971.2.26>金

<ショートショート>「自殺に関する弁証法的理性批判」を送ることに決めた。あとは切手を貼るだけ。

 

1971.3.4>木

ヤッタ! 「自殺に関する弁証法的理性批判」、準準A(?)!!

準準Aというのがいいではないか。後にも先にもコンナランクはないに違いないのだから。

 

1971.3.9>火

きのうはじめて落合恵子のDJをきいた(走れ歌謡曲)。

しかし3時からは、ちょっと遅すぎる。セイヤングは入らないのだ。

 

<(註)当時アイドル的人気を誇っていたレモンちゃんに興味があったのだろうか。セイヤングは落合恵子のホームグラウンドとも言うべき文化放送の深夜ラジオ。生憎私の家からは受信できなかったのである。)

 

1971.3.15>月

卒業式。

 

1971.3.17>水

府立高校の入試おわる。やれやれ。

テスト後、Tと梅田へ。旭屋で『白鳥の歌なんか聞こえない』と『遙かな国遠い国』と『たそがれに還る』を買った。

 

1971.3.20>土

9時に起きて府立市岡高校に向かう。途中でサイフを忘れたことに気づく。引き返そうとすると丁度同じ市岡を受けたわが下福中の生徒(名前は知らない)が歩いていたので電車賃をせびる。弁天町駅でTに出会った。Tと受験番号の貼り紙を見る。41番あった! Tも合格。ヨカッタヨカッタ。学校に報告し、いったん帰宅、昼を食べてからまた市岡高校に。仮のホームルームをし、帽子などを買って帰宅。

 

1971.3.25>木

ヤンタンを聞いていると、4月5日から司会者が交代するそうだ。

 

1971.3.31>水

チャチャヤン水曜担当が岩井宏にかわって金森コースケになった。加川良は引き続いて担当。

 

1971.4.1>木

壇上・池口の最後のヤンタン。途中から聞いた(1時前から)。今日はヤンタン・ステッカーを大奮発しているようだ。今日の(後半の)演目をメモする。

 

12:57 悲しくてやりきれない、フォークル

1:00 ツトムのこんなこと知ってるかい、斎藤努

1:03 CM

1:05 峠のわが家、ビング・クロスビー

1:08 あの日あの人、朗読・池田ゆうこ

1:11 CM

1:12 四月が来れば彼女は、サイモンとガーファンクル

1:16 愛の忘却、アダモ

1:20 岡八郎のヤンタン・クイズ

1:28<?1:23か>パーソナリティふたりのやりとり、名前の説明(ムケグチとか乱上って書いてくる人がいたりとか・・・)

1:29<?1:24か>カリフォルニア天国、ナンシー・シナトラ

1:26 今日ハガキを出した人の名前の読み上げ

1:29 おしまいのあいさつ→ヤンタンテーマ曲

 

1971.4.3>土

このスタイルのヤンタンは今日でおしまい。今日の担当は斎藤努と横井クニエ。

 

1971.4.23>金

バスケはやめ。バドミントン部に入部を決める。これでチャチャヤンもあまりきけなくなるな。

 

<(註)中学時代はバスケ部だったのだけど、練習を見に行くとかなりキツそうだったので、日和ってしまったのだ。>

 

1971.4.29>木

千里丘放送センターにショートショート懇談会に出席するためにTとクラブから帰ってきてすぐ出かけた。

内容はテーマもなくひとつの言葉から四方八方にに拡散しちゃんとした結論は出なかった。(同人誌を作る由)

眉村さんとボウリングをした。

 

1971.5.22>土

『チャチャヤング・ショートショート』が送られてきた。僕の「自殺・・・」は選外佳作だった。

 

<(註)「チャチャヤング・ショートショート」はチャチャヤングが製本した冊子で、ショートショートコーナーに寄せられた中から眉村さんとディレクターの嵯峨芳春さんが選択した秀作集。私の作品は最後のページに名前とタイトルだけ挙げられた。>

1971.5.25>火

ショートショート「真理」を送った。

 

1971.5.28>金

きのうのチャチャヤング、僕の「真理或いは動くことができなくなったことを証明された最新型の乗り物」は準Bだった。やはり石原藤夫に似すぎてたか。僕はだいぶ自信があったのだが・・・

 

今日、「工場管理人」と「識別者」を清書した。

明日か明後日に送ろう。どうしてもA級をとっておかねば。『チャチャヤング・ショートショート2号』に名前だけでも出るようにしておかないと・・・

 

<(註)「識別者」はAを取ったらしい(それが判ったのは半年も後のこと。このときの放送を私は聞き逃したらしく、日記に記載がない。その結果、以降もAが取れない取れないと言って、アセっているのである。このとき放送を聞いていたら、私はもっとショートショートを書き続けたかも分からない。>

 

1971.6.19>土

「死刑囚は自殺をするか?」を書き上げた。不満。題から内容を作るのはムズカシイなあ。

 

<(註)この頃、三島の『仮面の告白』を読んでおり、なかに出てくる「死刑囚は自殺をしない」という寸言がいたく気に入っていたのだ。>

 

1971.6.21>月

「死と合格証書ではどちらが重いか」を封入した。明日にでも送るつもり。これならAは確実。

その結果を見て「死刑囚は・・・」を検討する。

 

1971.6.25>金

「雨」を書いた。明日Tに見せるつもり。

 

<(註)日記には記載がないが、このショートショートは眉村さんに朗読してもらった記憶がある。>

 

1971.7.2>金

「死と合格証書・・・」Bの中。不満。

 

1971.7.12>月

眉村さんから『時のオデュセウス』を送っていただいた!

サイン入り。ご健筆を祈りますと添え書き。

 

<(註)この辺からチャチャヤングに関する記載がない。ショートショートコーナーの成績が思わしくないためか、クラブに本格的にいれこみはじめてラジオを聞かなくなったのか、定かではない。>

 

1971.9.1>

Tがはじめてショートショートを<チャチャヤングに>送ったそうだ。ランク付けが楽しみだ。

 

1971.9.3>金

昨日のチャチャヤンで、Tの「風立ちぬ」がBの中だった。俺も負けてられないゾ!

 

1971.9.9>木

T、今度はB上を取った。

 

1971.9.11>土

ショートショート「マジックランタン」を書き上げた。

 

1971.9.18>土

「フレンズ」試写会希望、ショートショート集「C席の客」希望のハガキをチャチャヤングに送った。

 

1971.9.25>土

「マジックランタン」がB中以上に入ってなかった。封筒が届かなかったのではないのか。

TはまたB上格!

 

<(註)はじめて名前を読み上げてもらえなかったらしい。この頃になると応募点数も増え、作品のレベルも上がって、私の力量では太刀打ちできなくなりつつあった。>

 

1971.10.2>土

眉村さん、今度「司政官」シリーズを書き始めたそうだ。第1作が10月臨時増刊号(SFマガジンの)に載っていると、チャチャヤングで言っていた。

 

昨日の新聞の角川の広告に小松『日本アパッチ族』が文庫で出たことが記されていた。(260円)

これでSF作家の文庫は

星『人民は弱し、官吏は強し』、『ボッコちゃん』、『気まぐれ星のメモ』

筒井『幻想の未来』

豊田『火の国のヤマトタケル』

小松『エスパイ』、『日本アパッチ族』

の7冊になった。

 

1971.11.14>日

昨日Tと電話していて、チャチャヤンで眉村さんが僕の「識別者」が『チャチャヤング・ショートショート(2)』に載っていると言っていた、と教えてくれた。

「識別者」は「工場管理人」と一緒に送ったのだが、結果はとうとう知らずじまい。僕はもしAを取るなら「工場管理人」だなと思っていたのでちょっと意外だった。

でも、何でもいいからショートショート集に載ることになったのは大変嬉しい。

 

1971.11.18>木

今、12時半。今日は昼寝をした、久しぶりにチャチャヤング聞こうと思っている。

 

今日のチャチャヤングで、眉村さんが『復活の日』は読みごたえがあるといっていた。小松はあんまり読んでないので、買ってみようと思う。

 

1971.12.5>日

「チャチャヤング・ショートショート第二集」が届いた。

皆、うまいと思った。「求心的」ということで共通していると思う。

これは眉村さんの好みからくるものか。

独白体が非常に多い。それが殆どの場合成功していて、いやみがないところはさすがだ。

 

1971.12.6>月

とにかくみんなうまくなった。S・Aや宇井亜綺夫なんか抜群だ。「チャチャヤング・ショートショート2集」

 

<(註)拙作「識別者」も載っている筈なのに記載がない。冷静というか・・・。たぶんこの頃はショートショートも投稿しておらず意識の上ではリタイヤしていたのではないだろうか。輪の外からながめているから、このような醒めた記述になっているように思われる。宇井亜綺夫とはこの時期まだ出会っていない。その頃の宇井亜綺夫は、S・Aと並んで一頭抜きんでていましたね(笑)。そしてこれ以降、チャチャヤングの記述はない。チャチャヤング終了(あるいは眉村さんの降板)の記録もない。>

 

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(付録)

「チャチャ・ヤング=ショート・ショート」(1971−bP)眉村卓編(発行所 MBSチャチャ・ヤング/大阪・吹田・千里・毎日放送)1971.5.1発行

 

<もくじ>

願い事○和田宜久/砂漠○S・A/ひも○岩崎均/ふたつの空○宇井亜綺夫/エイプリル・フール○清水順也/哀愁○藤原健司/精神病院○藤原祐之介/さりげない死○安部房公/連作「青い空」(その2)/アイサツもどき○眉村卓

 

<背表紙>

(火)馬場章夫/(水)西岡たかし/(木)加川良・金森幸助/(金)眉村卓/(土)杉田ジロー/(日)上田彰

 

「チャチャ・ヤング=ショート・ショート」(1971−bQ)眉村卓編(発行所 MBSチャチャ・ヤング/大阪・吹田・千里・毎日放送)1971.11.1発行

 

<もくじ>

岬○S・A/識別者○大熊宏俊/誕生○東元庸泰/仮面○亜梨子/科学の勝利○変寧夢/科学者○姫崎仁孝/わがスタドイド○和田宜久/永遠と死○南山鳥27/墓標のこわれる時○雫石鉄也/時のおくりもの○島田弘明/喪失○宇井亜綺夫/潮の響きに○小野霧宥/あとがき○眉村卓

 

<背表紙>

(火)馬場章夫/(水)高石ともや/(木)加川良・金森幸助/(金)眉村卓/(土)谷村進司/(日)上田彰

 

 

 

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